歯科社保コーナー 歯科診療報酬改定の要点
1.歯の保存に係る技術の評価および障害者歯科医療の充実
・歯周病安定期治療(SPT)算定の間隔について、従来の歯周外科治療を行った場合と同様に月1回の算定ができる対象者に(1)全身疾患の状態により歯周病の症状に大きく影響を与える場合、(2)全身疾患の状態により歯周外科手術が実施できない場合、(3)侵襲性歯周炎の場合――が追加された。あわせて、歯の保存に係る技術を評価するとして、歯周基本治療、歯周外科手術、歯髄保護処置、抜髄、感根処、根貼、加圧根充の点数がそれぞれ引き上げられた。また、歯周外科手術後の部分的再評価が、歯周病部分的再評価検査として新設された。
・初・再診料の「障害者加算」の呼称が「歯科診療特別対応加算」に改められ、対象者について、“日常生活に支障を来たすような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁にみられ、著しく歯科診療が困難な状態”とされた。また、著しく歯科診療が困難な患者の状態に応じて、身近な歯科医療機関でも歯科治療が受けられるよう、専門性の高い歯科医療機関から一般の歯科医療機関に患者を紹介した場合、診療情報提供料に100点加算が新設された。患者を受け入れた一般の歯科医療機関には歯科診療特別対応地域支援加算100点(初診料への加算)が新設された。
2.歯科固有の技術の評価
・歯の修復治療に関する技術評価の見直しとして、下記がそれぞれ引き上げられた。
・早期に口腔機能の維持・回復が図られる補綴治療に関する技術評価の見直しとして下記がそれぞれ引き上げられた。
・歯管、歯在管の加算点数であった機械的歯面清掃が、処置の項目へ独立して評価され、同日でなくても算定できるようになった。
3.新規医療技術の保険導入
・接着ブリッジの適応範囲が臼歯部まで拡大された。
4.先進医療の保険導入
・広範囲な顎骨欠損等の特殊な症例に対してのインプラント義歯が保険導入された。実施にあたっては、(1)歯科または歯科口腔外科を標榜している保険医療機関であること、(2)当該診療科に係る5年以上の経験および当該療養に係る経験が3年以上の経験を有する常勤の歯科医師が2名以上配置されていること、(3)病院であること、(4)当直体制が整備されていること、(5)医療機器保守管理および医薬品に係る安全確保のための体制が整備されていること――などの施設基準を満たして届出を行う必要がある。
5.画像診断
・医科の準用点数だったCT撮影が歯科点数として位置づけられた。算定要件は、歯科用エックス線撮影または歯科パノラマ断層撮影で診断が困難な場合で、(1)埋伏智歯等、下顎管との位置関係、(2)顎関節症等、顎関節の形態、(3)顎裂等、顎骨の欠損形態、(4)腫瘍等、病巣の広がり、(5)その他、歯科エックス線撮影または歯科パノラマ断層撮影で確認できない位置関係や病巣の広がり等確認する特段の必要性が認められる場合――のいずれかに該当する場合。点数に変更はない。
・パノラマ撮影で一連の症状確認のために行う2枚目以降の診断料が50/100減算の対象外となった。
6.周術期における口腔機能の管理等
・術後の誤嚥性肺炎等の外科手術後の合併症等を軽減する目的で、がん患者等の周術期における歯科医師の包括的な口腔機能の管理等を評価するため、周術期口腔機能管理計画策定料、周術期口腔機能管理料(I)(II)(III)、周術期専門的口腔衛生処置が新設された。
7.在宅歯科医療
・在宅歯科医療を推進する観点から、歯科訪問診療の対象者について、歯科訪問診療の実情もふまえ適切に歯科訪問診療が提供されるようにとして、通知から「常時寝たきりの状態等」の表現が削除された。ただし、「寝たきりの状態等」の削除とともに「通院が容易な者に対して安易に算定してはならない」との文言が追加された。
・居宅に対する歯科訪問診療を推進する観点から、歯科訪問診療料1(同一建物居住者以外)が引き上げられ、歯科訪問診療料2(同一建物居住者)は据え置かれた。また、20分以上の算定要件が一部緩和され、患者の容体の急変で20分に満たなかった場合も算定できる取り扱いになった。
・在宅療養支援歯科診療所の取り組みを評価するとして、在宅療養支援歯科診療所の歯科衛生士が訪問診療に同行し診療補助を行った場合に算定する、歯科訪問診療補助加算が新設された。在宅療養支援歯科診療所に属する歯科衛生士が、訪問診療の補助を目的に歯科訪問診療を行う歯科医師と同行し、実際に診療の補助を行った場合に、歯科訪問診療料に加算する。
・訪問診療時の器具携行を評価する在宅患者等急性歯科疾患対応加算が、1人の患者に対して「1回目」と「2回目以降」で異なっていた評価から、「同一建物居住者以外」と「同一建物居住者」による評価に変わり、同一建物居住者の場合は引き下げられた。
8.その他
・充填の評価が見直され、歯質に対する接着性を付与または向上させるために歯面処理を行う場合(充填1)とそれ以外(充填2)に区分された。
・処方せんの様式が変更され、個々の処方薬について後発医薬品への変更が不可である場合にチェックをすることとなった。また、後発医薬品の使用促進のため、後発医薬品のある医薬品を一般名(いわゆる成分名)で処方した場合、処方せんの交付1回につき2点を加算できることとなった。