世界の本流は平和と核兵器廃絶 ただちに行動に立ち上がろう
協会は、「核戦争は健康と環境に対する最大の破壊であり、核戦争の予防に力を尽くすことが、患者の命と健康を守る医師の役割」であるとして、核兵器廃絶の運動に取り組んでいる。その一環として、毎年広島・長崎で開かれる原水爆禁止世界大会へ代表を派遣している。
「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を―人類と地球の未来のために」をテーマに原水爆禁止2023年世界大会国際会議が8月4~5日、広島大会が8月6日、長崎大会は台風接近のため日程を変更して8月7~8日に、それぞれ開催された。協会からは、長崎大会に早川純午副理事長、事務局3人を派遣した。
ロシアによるウクライナ侵攻が続くなか、5月の広島での主要七カ国首脳会議(G7サミット)は「核抑止力」を公然と主張し、失望と批判が広がっている。また、7月のNATO首脳会議は、安全保障にとって、「核兵器が唯一無二の存在」だとし、アメリカの「核の傘」に安全保障を頼る現状が改めて浮き彫りとなった。しかし、核兵器禁止条約の署名国は92カ国、批准国は68カ国(2023年4月現在)と増え続けており、被爆78年を迎える今大会は、核兵器廃絶を願う市民社会の運動を総結集し、各国の政府との共同をさらに発展させるための重要な大会となった。
7日の長崎大会開会総会では、15カ国から41人の海外代表を含め、約3800人(うちオンライン視聴は約1500人)が参加し、4年ぶりに国内外から参加者が対面で集った。議長団の小畑雅子氏は、日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める地方議会の意見書採択が661議会に達したことにふれ、核廃絶こそが世界の流れであり、被爆地から市民社会の「真の声」を世界に発信することを呼びかけ、開会宣言とした。
被爆者挨拶では田中重光氏が、4歳10カ月で被爆した体験を語り、「日本政府は、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約を批准し、『核兵器のない世界』へのリーダーシップを発揮するべきだ。核戦争による人類滅亡の危機を救う唯一の道は核廃絶しかない」と述べた。また、国内外の参加者・団体から平和行進などの取り組み・アピール・訴えが行われた。
8日は日程変更し、午前中にフォーラム・分科会、午後に当初は9日に行う予定だった閉会総会を行った。「非核平和のアジアと日本」の分科会では、千坂純氏(日本平和委員会事務局長)による問題提起のあと、選挙で「基地はいらない」という意思を示し続ける沖縄のたたかいや、アジアの現状について報告し、交流した。千坂氏は、核兵器禁止条約に参加する政府をつくり、アジアを新たな核保有と「核の傘」による抑止論の悪循環から非核平和へと転換するべきだと述べ、ASEAN(東南アジア諸国連合)がめざす、紛争の平和的解決を原則とする包摂的な枠組みの実現の努力に合流しようと訴えた。
閉会総会では、国連の中満泉軍縮担当上級代表らがビデオメッセージを寄せた。中満氏は「人類が平和を求めて前進するための新たな原動力が必要」だとして「市民社会での多くの声が、核リスクを減少し、軍縮を進めると期待している」と語った。また、「被爆者の声」として田中煕巳(てるみ)氏が長崎での被爆体験を語り、「被爆者の体験を追体験し、リアルにつかんでほしい。それが核兵器をなくすための大きな行動力になる」と訴えた。
核兵器禁条約会議への参加を
決議では、核兵器禁止条約を力に、草の根の運動と市民社会、諸国政府の共同を大きく発展させ、危機を乗り越えていくべきと強調。「核抑止力」論から脱却し、核兵器禁止条約に署名・批准すること、11月に開催される第2回締約国会議に少なくともオブザーバー参加すること、被爆の実相・核兵器の非人道性の周知、軍事費削減とくらし・福祉・教育の拡充、「オール沖縄」のたたかいと連帯し、辺野古新基地建設の断念などを日本政府に求めていくことが採択され、幕を閉じた。