改憲論議の常態化、流れを変える政治の転換を
「あいち医師・歯科医師九条の会」は、30回目の憲法のつどいを9月11日(土)午後、名古屋サンスカイルーム(中区伏見)で開催、医師・歯科医師や市民ら28人が参加した。三宅裕一郎氏(日本福祉大学教授、憲法学)が「どうなる憲法、どうする憲法~改憲をめぐる情勢」と題して講演した。
自民党総裁選 九条改憲は推進
三宅氏は、自民党総裁選挙で立候補表明をしている岸田氏は、「自衛権明記など党の4項目の改正をしっかり考えていくべきだ」(出馬表明会見、8月26日)と表明、高市氏は「迅速な敵基地の無力化をするために法整備が必要」(同、9月8日)、河野氏も「憲法改正は非常に大きな問題だ」(同、9月10日)と、3氏とも改憲という点では自民党の進める改憲を前に進める立場と指摘した。
各政党についても、自民党は「改憲4項目」(2018年3月)を掲げ、公明党は、「加憲」の立場、日本維新の会は「憲法改正原案」(2016年3月)、国民民主党は「憲法改正に向けた論点整理」(2020年12月)を発表、立憲民主党は「憲法論議の指針(案)」(2020年11月)で個別の改憲課題を議論する姿勢を示している。このように、各党からすでに何らかの形で改憲が模索され、その動きが常態化していることに注意を促した。
国民投票法改正で予断許さず
6月の通常国会で成立した国民投票法改正は、メディアなどを利用した運動の規制の付則が付き、立憲民主党は「(施行後3年を目途に必要な法整備を講じるとの附則に)3年は改憲が遠のいた」としているが、自民党はCM規制と憲法本体議論は同時に可能と表明しており、この後の議論次第で予断を許さないとした。
改憲潮流の一つとして「敵基地攻撃能力」論があり、第二次安倍内閣以降、政府主導で中国を念頭に台湾海峡も視野に議論されている。しかし、国際法上「先制攻撃」は禁じられていること、相手国の「攻撃着手」のタイミングは把握不能であること、「専守防衛」の立場のもとで敵のミサイル基地を攻撃するには現地でのスパイ活動や地上戦も含めて想定しなければならない問題などを紹介した。
医療や福祉分野にとって、現下の課題はコロナ禍にどう対応するかだが、核兵器や敵基地攻撃のための防衛費をコロナ対策費に振り向ければ、日本ではICU1.5万床、人工呼吸器2万台、医師1万人の給与がまかなえるという、核廃絶国際キャンペーンの試算を紹介して結んだ。
質疑の中で、9月8日に安保法制廃止と立憲主義の回復を求める市民連合が野党共通政策を提示し立憲など4党が署名したことについて、国民民主党が署名していないことを問われ、三宅氏は「改憲の流れを変えるには野党の結束が必要。国民民主は自民党に抱き込まれる可能性があり、大同小異で野党の結束の中に入ってほしい」と期待を示した。