保険給付縮小に9割が反対
「保険で良い歯科医療を」全国連絡会では、7月~9月の約2カ月間に一般市民を対象に、歯科医療の受診動向や歯科保険医療への意識に関する調査を実施した。市民アンケートは、43都道府県の20歳代から80歳代以上までの各年代の7,149人から回答が得られた。
歯科治療の放置が約3割
今年の4月に消費税が8%に引き上げられたことに関して、今後の歯科受診についての意見を聞いた設問では、「変わらない」との回答が82.9%であったが、「受診を控えようと思う」との回答も13.2%あった。
また、現在治療をせずにそのまま放置しているところがあるかとの問いには、29.0%が「ある」と回答した(グラフ1)。年代別では30歳代が38.2%と最も高く、20歳代、50歳代と続いた。
放置している理由(複数回答)については、「時間がない」が59.3%、「治療が苦手」31.1%、「費用が心配」が26.5%であった(グラフ2)。年代別にみると、「時間がない」は20歳代~50歳代で、「費用が心配」は60歳代以上で高い傾向がみられた。
治療を行わず放置することは、重症化と医療費の増加につながる。「時間がない」「費用が心配」との回答をあわせて考えると、歯科治療が後回しになっている状況がうかがえる。なお、「費用が心配」と回答した人のうち、消費税増税後の「受診を控える」と回答した人は49.7%と約半数あった。
「自然の歯に近い被せもの」の保険適用―6割以上が希望
国が保険のきかない治療を増やすことについては、92.5%が「反対」と回答(グラフ3)。各年代全てで「反対」が九割前後となっており、保険給付範囲の縮小に反対というのが、国民共通の意見であることを裏付ける結果となった。
健康保険に取り入れてほしい歯科治療についての設問(複数回答)では、「自然の歯の色に近い被せもの」が62.9%、「新しく開発された技術や材料」が56.0%、「子どもの歯科矯正」が39.0%、「金属を使った入れ歯」が17.0%であった(グラフ4)。年代別では、「自然の歯に近い被せもの」「新しい技術や材料」の保険導入を望む声は30歳代から50歳代で高かった。また「子どもの歯科矯正」については、30歳代が55%と最も高く、40歳代、20歳代と続いた。
アンケートには、「増税されれば、ますます歯科に行かなくなる」「歯の治療は大事だから、多少無理しても受診する」「自費が多いイメージの歯科治療なので、必要な分の治療だけで済ますように思う」「保険外のものを勧める状況を改善してほしい。よりよい治療の保険適用が先決だ」「子どもの歯科矯正が高いので、健康保険で受けられるようにしてほしい」などの意見も寄せられた。
今回のアンケートは、患者・国民が保険給付の縮小につながる混合診療拡大の方向ではなく、費用の心配をせずに必要な歯科治療は保険で受けられるように望んでいることを示す結果となった。