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【16.06.05】シリーズ国政ウォッチ(4)

平和・憲法―自民改憲案の目指すもの

安倍首相は、「憲法改正はこれまで同様、参院選でしっかり訴えていく」(年頭記者会見)、「どこから変えていくかは、わが党の案で示したい」(2月5日衆院予算委員会)など、自身の任期中に憲法改正を目指す考えを示している。
改憲を許すか許さないかが参院選での争点となっていくなかで、自民党の改憲草案(日本国憲法改正草案・2012年)が抱える問題点について改めて考えた。
不戦と平和的生存権を前文から削除
自民党改憲案は前文を全面的に書きかえ、日本国憲法前文が掲げる侵略戦争への反省、不戦平和の誓いを破棄するものとなっている。
日本国憲法前文は「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」と、国民の不戦の決意を示し、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と国際協調による平和構築の理念をうたっている。自民党改憲案はこれらの規定をすべて削除している。
同じく前文の「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とした平和的生存権の規定も改憲案では削除されている。

九条を戦争の根拠規定に
自民党は改憲案Q&Aで「現行憲法の全ての条項を見直す」としているが、最大の狙いは9条だ。
日本国憲法第2章は「戦争の放棄」とされ、そこに九条が置かれているが、自民党改憲案の第2章は「安全保障」とされ、9条は全面的に書きかえられている。「戦争放棄」を規定した9条1項は基本的に変更しないとしながら、9条2項で「前項の規定は自衛権の発動を妨げるものではない」と明記し、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」の規定を削除。新たに第9条の2として「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」としている。
政府はこれまで、9条2項があるため自衛隊を「軍隊ではない」「必要最低限度の実力組織」としてきた。また、「自衛隊の存在理由から派生する当然の問題」(工藤敦夫内閣法制局長官1990年)として(1)武力行使の目的を持って海外派兵すること、(2)集団的自衛権の行使、(3)武力行使を伴う国連軍への参加――については「許されない」としてきたが、自民党改憲案はこの歯止めを消し去っている。
昨年強行成立された安保関連法は集団的自衛権行使を具体化する準備といえる。

災害を口実に独裁政治
自民党改憲案の98条は「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態」の際に「緊急事態の宣言」を発することができると規定している。さらに99条では、緊急事態が発せられた際に「法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」と規定、同3項で「何人も…国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」としている。
緊急事態条項は「大規模な自然災害」を口実に、独裁的に権力行使ができる仕組みを狙ったものだ。

改憲不要が多数に

この間、各社の世論調査では、憲法改正は「必要ない」が多数になっていることが報じられている。
読売が実施した世論調査では、改憲について「しない方がよい」が50%と半数を占め、「する方がよい」の49%を同紙では八年ぶりに上回った(3月17日付)。他にも、安倍政権下での改憲に「反対」57%、「賛成」33%(5月1日付「中日」)、いまの憲法を変える必要が「ない」55%、「ある」37%(5月3日付「朝日」)など、ここ数年、改憲への賛否は拮抗してきたが改憲不要の声が多数となる情勢が生まれている。
安保法制に反対する運動が各界・各層で広がったこと、第1次安倍内閣のもとで改憲を阻止するために九条の会が全国各地で結成され、草の根の世論形成を行ってきたことも大きな要因ではないだろうか。  

自民党改憲草案(前文)

日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

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