より良い医療制度をめざす活動

【16.05.25】シリーズ国政ウォッチ(3)

社会保障の財源問題

財政赤字は社会保障の責任?
政府は、国の財政赤字の責任を社会保障に求め、「骨太方針2015」では「社会保障給付の増加を抑制することは……経済成長にも寄与する」と、社会保障削減を合理化している。
そして、社会保障の安定財源として消費税を主要な財源とする方針だが、社会保障には所得の再配分機能が求められており、その原則に反する消費税は、例えそれが社会保障の充実のためとしても財源にはふさわしくない。また、日本の税収に占める消費税収の割合は現状でも約29%でEUと同水準、税率25%のスウェーデン並みの負担水準になっている。一方で、消費税は大企業の負担が大幅に軽減される税制のため、日本経団連は消費税率を引き上げて、法人実効税率を引き下げるよう求めている。1989〜2015年度までの27年間の消費税収は304兆円で、法人税の減収分263兆円を補った勘定である。
また、財政赤字を社会保障の責任とする考えには大きな誤りがある。赤字の要因には歳入の減少がある。政府の基幹税である法人税・所得税・消費税の、1990年の税収は計49兆円だったが、2009年には29兆円まで減少している(同期間に国内総生産は27兆円増)。国の税収は1989年から増えておらず、歳出は増える構造にある。これでは財政が赤字になるのは当然である。少なすぎる税収問題を解決すれば、社会保障給付費を底上げすることができ、診療報酬引き上げや患者負担軽減も実現可能である。
政府は社会保障支出の「かなりの部分が国債などによって賄われている」というが、社会保障給付費のうち国費が占める割合は3割弱に過ぎない。むしろ社会保障給付費の多くを占めるのは保険料で、約5割を占めている。つまり、「かなりの部分」は国民と事業主の負担になっている。
政府の経済財政諮問会議に麻生財務相が提出した資料では、「過去最高水準の企業収益」の結果、2012年度から14年度までに、経常利益は16兆円余り増えたが、設備投資は5兆円、従業員給与・賞与は0.3兆円しか増えていない。一方で、内部留保は50兆円、現金・預金等は20兆円も増えている。“大企業が潤えば国民も豊かになる”という「トリクルダウン」論の破綻は明らかで、354兆円余りに膨らんだ内部留保を活用すべきである。

社会保障には雇用創出、生活安定など経済活性化の効果が
2012年「厚労白書」は、社会保障の機能・役割として、(1)生活上のリスクを軽減し、生活への安心を提供する、(2)高齢世代への私的扶養を代替することで、現役世代の生活保障にも貢献している、(3)経済成長と社会の安定に寄与し、雇用を創出する――と述べている。さらに「社会保障には、経済を底支えし、経済を活性化させる機能がある」として、「『所得再分配機能』により、格差が固定化することを未然に防止し、社会の安定に寄与している」と述べているほか、生活安定機能や雇用創出機能、生産誘発機能、資金循環機能などを挙げている。社会保障は財政赤字の要因どころか、経済効果が大きいのである。

消費税増税に頼らない社会保障の安定財源は
保団連は、消費税増税に頼らない社会保障の安定財源として、主要国と比べて法人税負担・社会保険料事業主負担が低い大企業に社会的責任を果たさせ、大資産家には公平な税負担を求めている。これに加え、公共事業費や防衛費、特別会計をはじめとした国の歳入・歳出を抜本的に見直せば、社会保障の安定財源を確保することは十分可能である。
(下記「保団連の提案」参照)

保団連の提案

医療への公的支出を増やす基本的な考え方と3つの提案
【1】基本的な考え方は、大企業の税と保険料負担を増やして財源創出する
【2】第1の提案 事業主負担を増やして保険料収入を増やす
(1)被用者保険加入者を増やし、賃金を引き上げて、保険料収入を増やす。
(2)被用者保険の保険料率は、労使折半から事業主負担割合を増やして10%(協会けんぽ並み)に引き上げる。保険料率が10%未満の健保組合が79.4%(2015年度)を占めている。中小企業(医療機関含む)には事業所規模による調整や公費負担を行う。
(3)保険料は給与収入や所得に応じた負担とする。
以上(1)、(2)、(3)を通じて、少なくとも国民医療費の事業主負担を20.3%(2012年度)から25.1%(1992年度)の水準まで戻す。
【3】第2の提案 実際の法人税課税を先進国並みに高める
(1)法人地方税等を含む法人実効税率は2015年度には32.11%に下がり、2016年度からは29.97%になる予定である。法人実効税率引き下げによる税収減は、1998〜2013年度の15年間で累計額は105.7兆円に上る(参議院調査室「経済のプリズム」2015年11月号)。
(2)課税ベースを拡大し、少なくとも消費税導入前の法人税率42%、法人事業税率11%に戻す。資本金1億円以上の利益計上法人の法人税率を42%に戻すだけでも約6兆4071億円の財源創出が可能。
【4】第3の提案 所得に応じた所得税課税にする
(1)所得税最高税率は、1989年に60%から50%に引き下げられ、2015年以降は45%となった。少なくとも消費税導入前の所得税最高税率60%へ戻し、所得の再配分機能を高めることを提案する。
(2)株式配当に係わる分離課税を廃止し、総合所得課税とする。株式配当をすべて総合所得課税にすれば1兆円以上の財源創出が可能。
(3)資産所得課税(土地・建物の長期譲渡所得など)の税率を引き上げる。

※「医療再建で国民は幸せに、経済も元気に―医療への公的支出を増やす3つの提案」から(抜粋)

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