より良い医療制度をめざす活動

【16.04.25】シリーズ国政ウォッチ(1)

社会保障〜縮小、差別化でいいのか〜

2016年夏、参院選挙(あるいは衆参同時選挙)が予定されている。「アベノミクス」「一億総活躍社会」「憲法改定」など、安倍政権は自ら公約・争点として信を問う姿勢である。「2016年国政ウォッチ」として、医療・社会保障分野、平和・民主主義などの課題別に国政のこれまでを振り返り、これからを考える機会としたい。

安倍政権は、「アベノミクスの第二ステージ」として、「一億総活躍社会」を提案し、2016年度社会保障予算では「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」を掲げ、1.5兆円余りの「充実」を図るとしている。しかし、その財源は消費税増税と社会保障の重点化・効率化=つまりは給付抑制や負担増を伴うものとなっている。さらに、「充実」とは裏腹に社会保障の縮小や差別化を進める動きも進んでいる。

骨太方針、成長戦略で「産業化」
昨年六月の「経済財政運営と改革の基本方針2015」(骨太方針2015)は、「社会保障の産業化の推進」をうたい、社会保障は「民間の力を最大限活用して関連市場の拡大を実現することを含め、社会保障関連分野の産業化に向けた取組を進める」と記述された。
骨太方針2015と同時期に改訂された「『日本再興戦略』改訂2015」(成長戦略)でも、「医療・介護・ヘルスケア産業の活性化」と明記されている。
「医薬品の費用対効果」をめぐって、中医協で議論が始まっているが、総額3,500万円ものがん治療薬を保険適用しているのは医療財政を圧迫しているという議論では、「一部の患者のための高額な医療費を国民が負担する医療保険制度で支えるのか」という国民の分断・対立になりかねない。また、「費用対効果が悪い」と判断されれば、患者が必要とする医薬品や手術などが保険診療で使えなくなるリスクもある。この問題では、高額な薬価の構造へのメスを入れ、医療を儲けの対象に群がる大企業への規制が必要であり、高額でも真に保険診療として必要な治療法や薬剤は保険適用を進めるべきという観点も必要ではないか。

皆保険制度をゆがめる選定療養拡大
4月13日の中医協総会で、将来の保険適用を前提とせず自己負担が事実上固定化される「選定療養」について、対象を拡大する案が示された。拡大案では、透析治療などで「差額診察室」の創設や、制限回数を超える医療として腫瘍マーカー検査のAFP、CEA以外への対象拡大など、多数提案。さらに差額ベッドの病床数の緩和や医師の指名料などの意見も提出されている。総会で日医の松原副会長は、腫瘍マーカー検査の範囲拡大について「(本来は保険適用を検討すべきで、範囲拡大で)広げることは危惧している」と述べている。保険診療を基本とする日本の医療制度で、あくまで例外とされてきた同制度を拡大することは、皆保険制度をゆがめ、医療を受ける環境に格差を広げるものになりかねない。

社会保障は「真に困った人」に?
財務省の財政制度等審議会(財政審)の分科会は、4月4日の会合で社会保障分野の「経済・財政再生計画」の改革工程表に沿って「着実に改革を検討・実施すべき」と提言した。その際指摘された改革メニューは「入院時の居住費(水光熱費)の自己負担化」「かかりつけ医以外を受診した場合の受診時定額負担」「高額療養費制度の見直し(高齢者の自己負担限度額特例を廃止)」など。保団連・保険医協会の署名「ストップ 患者負担増計画」で取り上げている内容そのものだ。
同会議では、メディファクス4月5日付報道によれば、「給付・負担の在り方についてはさらに見直していくべき」と、改革工程表にとどまらず、いっそうの患者負担増や医療保険給付範囲の縮小を求める意見が出されたほか、「市販品類似薬は(保険給付外にして)自己負担でいいのでは」との意見も出され、今春の診療報酬改定で湿布については枚数制限の措置が講じられた以後も、市販品類似薬の保険給付外しが引き続き狙われていることを伺わせた。
さらに、「骨太方針2015」がうたった「自助を基本に公助・共助を適切に組み合わせた持続可能な国民皆保険」の現在進行形の提言とも言える動きがある。自民党の「2020年以降の経済財政構想小委員会」は4月13日、「今後の社会保障改革」について提言を発表した。そこでは、「国民皆保険・皆年金」について、「(そのような)レールによる保障は財政的に維持できない」「一度レールから外れてしまうとやり直しがきかない」「政治が、その『レール』をぶっ壊していく」と宣言し、「所得等が低く、真に『困っている方』を特定し、重点的かつ費用対効果の高い支援を行う仕組みを整備する必要」を提起している。これは、社会保障を限りなく縮小する議論に他ならない。

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