より良い医療制度をめざす活動

【12.07.05】消費増税、社会保障改革法衆院通過

道理なき国民・国会無視の悪法
〜板津副理事長に聞く〜

 消費税増税法修正案と「社会保障制度改革推進法案」など一体改革関連法案は、民主・自民・公明三党の賛成多数で6月26日に衆院で可決が強行された。
 この問題について、板津慶幸協会副理事長に聞いた。

――今回の衆院通過には、三党合意がありました。これをどのようにみていますか。
 板津:「社会保障・税一体改革関連法」としてすでに提出されていた消費税法などの修正を法案審議の国会の場ではなく、三党のみで協議・合意したこと自体が問題と思います。報道では、三党の協議は高級ホテルの一室で行われたそうですが、国会審議を無視した議会制民主主義の問題であり、これが本当の「ダンゴ(談合)三兄弟」ではないでしょうか。
 「社会保障・税一体改革」は、財界の消費税増税・法人税減税と社会保障費抑制の要求を受けたもので、それを野田内閣が強行しようとしましたが、国民の反対が強く、財界の後押しで、結局民・自・公大連合で押し通そうとするものです。
 世論も消費税増税法案を「今国会で成立させるべき」という人は17%と低く(「朝日」6月6日付)、そもそも「増税反対」は各社とも依然として5〜6割と国民過半数です。このように、二重三重に国民無視のやり方だと思います。
 少し立ち入りますと、「社会保障制度改革推進法案」は、「一体改革」法案の審議の中で、自民党が「社会保障制度改革基本法案」として示していたものを、民主党がほぼ丸呑みしたものです。
 また、法案では「基本的考え方」で、社会保障制度の基本は「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされる」ことだと明記しました。これは日本経団連が「自助・共助・公助のバランスを見直し」と提言(「社会保障・税一体改革の着実な推進を求める」5月24日発表)したことを忠実に反映した形です。
 協会は、野田内閣の政策の基調は菅政権時の「新成長戦略」(2010年)にあり、それは「橋本行革」「小泉改革」に次ぐ新自由主義的「構造改革」の第三ラウンドと分析しました(定期総会議案書参照)が、今回の三党合意がこの流れにも沿った動きだということもいえると思います。

――消費税増税法の修正はどのようなところが問題なのでしょうか。
板津:2014年に8%、15年に10%に引き上げる点は何も修正を加えない一方、低所得者ほど負担が重くなる逆進性対策として8%への引き上げ条件として「簡易な給付措置」に触れているものの、10%への増税時にはどういう対策を講じるのか白紙のまま先送りされています。また、極めて不十分ながらも政府案に盛り込まれていた所得税の最高税率引き上げ(40%→45%)は削除・先送りされてしまいました。
 また、消費税増税でできた財源は、法人税減税などを含む「成長戦略」などに重点的に配分するという附則が新たに盛り込まれました。増税分が大企業減税の財源に回される形です。

――医療機関の消費税「損税」についてはどうなりましたか?
板津:当初案では「『高額の投資』に係る消費税負担」は何らかの措置を検討して「診療報酬等の医療保険制度において手当すること」などとされていましたが、「高額の投資」については税率8%段階で「手当」の結論を出すと明記され、「医療に関する税法上の配慮等についても幅広く検討を行う」と書き込まれました。当初案で政府関係者から「現状の非課税の扱いは10%への増税時も同じ」と見解が示されていたことに対して、医療各団体から「ゼロ税率」や「複数税率」などを求める声が広く上げられたことが一定反映したといえるのではないでしょうか。
 ちなみに、「損税」問題は、6月6日の衆院社会保障・税特別委員会で取り上げられ、小宮山厚労相は(1)日医の試算を引いて現行の5%でも2330億円に上り、民間病院の28%、診療所の31%が赤字になっている、(2)診療報酬ですべて補填されているわけではない――と答弁しました。質問者の日本共産党・佐々木憲昭議員は「経営が苦しいときに消費税増税がかぶれば、病院の経営が成り立たなくなる」と追及しましたが、全くその通りだと思います。

――「社会保障制度改革推進法案」については?
板津:原案の自民党案が「基本法」と称していたように、社会保障制度の「基本的な考え方」や「基本方針」が述べられていますが、社会保障制度に関する基本法的な法律提出は現行憲法で初の事態です。しかもその内容は、「社会保障の基本的考え方」として国民の自立を支える「家族相互」「国民相互の助け合いの仕組み」を掲げており、法案提出者の自民党議員は「自民党の哲学が貫かれている」と自負しました。しかしこれは、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とした憲法25条と相容れないものです。
 そして、社会保障の財源について「消費税収を主要な財源とする」と明記しました。これは、「消費増税か、社会保障費削減か」と二者択一を国民に迫る問題があり、社会保障の主要財源を消費税でまかなおうとすれば、10%では全く足りず、社会保障の大幅な切り捨てが避けられなくなります。

――医療分野については?
板津:民主党政策の看板だった後期高齢者医療制度廃止や最低保障年金制度創設は、法案で設置する「国民会議」の議論に棚上げしました。国民会議は、小泉政権時代の「経済財政諮問会議」の社会保障版といえるもので、ここでも自公政権流の政策決定手法が現れていると思います。
医療保険制度に関しては「保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図ること」が基本方針となっています(介護保険についても「サービスの範囲の適正化」と明記)。市販品類似薬や風邪など軽い病気を保険給付から外し自己負担にする混合診療の拡大・解禁の動きや保険免責制度の導入などに注意が必要です。
さらに、生活保護の医療扶助について「給付水準の適正化」が明記されていることも問題です。

――衆院通過で消費税増税は決まってしまったということでしょうか。
板津:はじめに触れたように、国会と国民を無視してのやり方に道理はありません。衆院で採決を強行しても、まだ参院があります。国会会期は9月8日まで延長されましたので、現在取り組んでいる「消費税増税はやめ、医療へのゼロ税率を求める医師・歯科医師署名」がまだの先生にはぜひご賛同をお願いします。

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