より良い医療制度をめざす活動

【11.11.05】市民不在の事業仕分け−名古屋市

市民不在の事業仕分け−名古屋市
市民の宝"敬老パス"を「見直し」と判定

   名古屋市は、新たな行政評価制度を設け、市民に定着している名古屋市の事業の廃止、縮小を強引にすすめようとしている。
 その手法は、総務局主導で内部評価を先行させ、その上で一部の事業を、外部評価と称して、市の選んだ「学識経験者」と市当局が見直しの視点で議論し、その後、僅か20人足らずの市民判定員が判定するというものである。
 マスコミに公開して、一事業につきわずか一時間という短時間で結論を出す手法に、「事業仕分けこそ仕分けすべきだ」との声が広がっている。


 名古屋市は、既に493事業の内部評価を行い、336事業の評価票を作成している。
 内部評価済みの対象事業には、福祉給付金、障害者医療、敬老パス、総合リハビリテーションセンター、療育センター、公立保育園保育料、30人学級、中学校スクールランチ、ひとり親家庭手当など医療・福祉・教育など市民生活に関わる事業が多数含まれている。
 これら内部評価事業のうち、31事業を、無作為抽出された市民約20人が、「廃止」、「見直し」、「継続」のいずれかに判定する「事業仕分け」が、10月21日、22日、23日に名古屋市公館で行われた。
 外部評価対象事業の判定結果は、(資料)の通りで、廃止6(女性会館・ランの館など)、廃止を含む見直し4(休養温泉ホーム松ヶ島など)、見直し17(敬老パス・生涯学習センター・中央看護学校など)、継続4(公立保育園の運営・30人学級など)と判定された。

判定の選択肢から「拡充」は除外
 今回の外部評価制度はあまりにも問題の多い制度であることが浮き彫りになった。
 第一に、判定項目の選択肢が「廃止」、「見直し」、「継続」の三択となっており、「拡充」は最初から除外されており、「廃止・見直し」への恣意的な誘導となっている。
 第二に、市民にとって無駄遣いと批判の多い「本丸御殿の木造再建」、「徳山ダム導水路」、「市会議員の海外視察旅行」などの事業は、仕分け対象事業に入っていない。
 第三に、対象事業の利用者の意見を聞く場がなく、肝心の当事者を抜きに議論され、判定される。
 また、内部評価結果に対しては市民から意見も募ったが、その内容は公表されていない。
 外部評価も内部評価も、市民参加を装いながら、市民不在の感は否めない。

名古屋市民の宝 敬老パスが最大の焦点に
 今回の事業仕分けで最大の焦点となった事業が「敬老パス」である。
 名古屋市の「敬老パス」は、65歳以上の高齢者の社会参加を支援し、高齢者の福祉の増進を図ることを目的に1973年から実施されている。
 敬老パスが交付されると、市営地下鉄・バス、ゆとりーとライン、あおなみ線を無料で乗車できる。
 高齢者がお金の心配なく気軽に外出することで、社会参加や健康づくりに大きな役割を果たし、健康増進、介護予防、地域経済活性化などの効果があり、医療費節減にも寄与している。
2004年度から、所得に応じて年額1000円から5000円の自己負担金が導入され、現在の交付率は64・2%に下がっている。
 自己負担金が導入されたとはいえ、他の政令指定都市の制度と比較すると対象年齢は最も広く、助成範囲・内容も優れており、文字通り「日本一」の制度であり、名古屋市民の宝である。

先に見直しありきの議論に疑問
 今回の事業仕分けで、総務局は、「今後、団塊の世代が65歳以上となるため、5年間で高齢者人口が約7万人増加すると推計されており、将来の財政負担の増大が見込まれることから、持続可能な制度とすべき」との意見を示している。
 そして、敬老パスに必要な事業費が、2010年度の約130億円が、2025年度には約160億円になるとの推計金額を示した。
 外部評価の場での学識経験者の議論は、「高齢人口が増えるので財政を圧迫する」との視点の発言が相次いだ。
 「市が一人につき37000円も肩代わりしており、他都市と比べてずば抜けて高い」と指摘する学識経験者もいたが、高いというだけで削減に直結するのは乱暴な論理である。
むしろ、高齢者にとって健康で元気に暮らす上で、敬老パスが貢献していることなど、もっと利用者の視点に立った議論がなされるべきではないか。
 学識経験者の中には、「札幌市では無料パスでお年寄りが街の中心部に集まり、芸術鑑賞、食事、買い物などで、経済効果がある」との調査結果があることを指摘し、名古屋市での敬老パスの効果についての質問があったが、残念ながら当局からの明瞭な返事がなされなかった。

「見直し」は公約違反
 わずか1時間足らずの議論の後、市民判定員の判定結果が出された。
 結果は、廃止1、見直し14、継続2との意見により、最終的に「見直し」と判定された。
「見直し」内容は、負担金の引き上げ、利用限度額・上限設定、対象年齢引き上げなどの意見が出された。
 河村市長は、終了後、判定結果について「皆さんの判断は最も重いものとして市政に反映させるよう約束する」と述べている。
 しかし、市長は「敬老パスは守る」とはっきりマニフェストに謳って市長に当選しており、見直しするとなれば、明らかな公約違反である。
 河村市長は来年度に市民税減税を実施しようとしているが、363億円の財源不足が生じると言われている。
 市民税減税は、わずか2%の高額納税者の減税額が、減税総額の25%を占め、法人市民税は、減税額上位十社で約12億円、納税企業のわずか0.01%の大企業が減税額の約2割を占める減税だったことが分かっている。
 大企業・大資産家のための減税の財源づくりに敬老パスをはじめとした福祉・教育・市民サービスが犠牲となって良いのかが問われている。

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