より良い医療制度をめざす活動

【11.10.25】請願署名項目の解説(3)

「消費税増税撤回を」
税収構造見直しこそ必要

 保険医協会では、秋から年末にかけて、受診時定額負担など新たな患者負担増計画の撤回、患者窓口負担の大幅軽減、消費税増税の中止などの要望を掲げて、医師・歯科医師署名と患者署名への協力を呼びかけている。
 今回は「消費税増税撤回」の項目について解説を掲載する。

要望項目3

消費税の増税は行わないでください

<解説>

消費税増税法案提出へ
 野田首相は、9月13日の首相就任後最初の所信表明演説で、消費税増税法案の来年の通常国会への提出を表明。安住財務相も、十月12日の日本経団連との懇談会で「(社会保障と税1体改革に関連し)消費税(の引き上げ)を正直に国民にお願いするしか道はない。来年には消費税(増税)の法案を必ず出す」と述べた。これらは「消費税の税率引き上げに向けた道筋を早期につけ、社会保障の財源確保を図る必要がある」「消費税率については、2015年度までに10%まで、段階的に引き上げることを明確化すべきである」と明記した「経団連成長戦略2011」(日本経団連、9月)に忠実に沿った発言である。
 消費税は、1989年の導入当初から、「直間比率見直し」を合い言葉に大企業・富裕者減税とセットの税制改革として施行されてきた。
政府は、増え続ける国の借金財政のもとで、社会保障財源に消費税増税は避けられないという。しかし、財政赤字が膨らんだ主要な原因は、1990年代以降の税制で所得税のフラット化・低減化、法人税減税、金融所得の優遇税制によって、税収が切り縮められてきたことにある。
政府の歳出に対する1般会計税収の割合は、1990年の86・8%から2009年には38・4%に低下している。税収額も60・1兆円から38・7兆円に減少。国内総生産は1990年と2009年とではほとんど横ばいなのに、税収だけ35%も減っている。
 税収が減った理由の1つは、法人税率が大幅に引き下げられたことにある。1989年の42%が現在は30%、さらに所得税の最高税率は70%が40%に引き下げられている。また、株売買や配当所得課税税率は、フランスが29%、アメリカが25%に対して、日本は2003年から2011年は10%に軽減されている。
 政府の1般会計税収に占める税目の割合は、1990年は法人税18・4%、所得税26・0%、消費税4・6%だったが、2009年には法人税6・4%、所得税12・9%といずれも半分以下となり、消費税だけが9・8%と倍増している。

税収構造を見直し
大企業に応分の負担を

 このような「消費税以外に増収の道はない」という税収構造を見直し、2009年度に318兆円に膨れあがった内部留保を温存する大企業に応分の負担を求めるべきである。
 大企業は、社会保障先進国と比べて法人税負担・社会保険料事業主負担が低い現状がある。企業・事業主の社会保障財源の拠出(対GDP比)は、ヨーロッパ15カ国の10・7%に対して、日本は5・3%にとどまっている(2010年社会保障・人口問題研究所データ)。社会保障財源の拠出をヨーロッパ15カ国並みに引き上げれば、20〜25兆円の財源が捻出可能である(2011年7月3日、保団連夏季セミナーでの二宮厚美・神戸大学教授講演)。これは消費税率10%に相当する財源規模になる。
 さらに、あるべき税制としては「応能負担による総合課税、累進税率、最低生活費非課税、勤労所得軽課・不労所得重課等の租税原則に基づく税体系に変える必要」(富山泰一不公平な税制をただす会事務局長・税理士、月刊保団連2011年7月号)があるとの指摘は、日本の税制の根幹問題としていま改めて押さえておきたい。

国民負担増は困るという世論に合流を
 消費税は、「医療は非課税」という扱いのため、医療機関には損税(控除対象外消費税)が大きな負担となっている。日本医業経営コンサルタント協会「医療費財源に関する検討会」によると、医科診療所(総額・概算推計)1診療所あたり202万8千円、1病院あたり2252万3千円の控除対象外消費税を負担していることが明らかになっている(2010年度)。
 消費税をめぐっては、「社会保障財源に困っているなら消費税はやむを得ないのでは」「損税を解消するために社会保険診療報酬も課税にすれよいのでは」という声が会員から寄せられることもある。しかし、国民負担が増えて国民が困れば受診抑制となり、医療機関が困るという視点に立って国民の増税反対の世論に合流することが、いま求められているのではないだろうか。  

 

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