より良い医療制度をめざす活動

【11.07.25】社会保障と税の一体改革……問題点は

受診抑制に拍車 毎回100円を別徴収

 政府の社会保障改革検討本部は、6月30日に「社会保障・税一体改革成案」をまとめたが、与党内からも強い反発があり、翌7月1日に閣議決定できず、閣議報告という異例の形で一応の決着を見た。与謝野担当大臣は、早ければ今秋の臨時国会にも関連法案を提出したい意向を示している。

 最大の焦点となっていた消費税の引き上げについては、「2010年代半ばまでに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げる」と明記された。
 6月2日の「社会保障改革案」(以下、原案)では、「2015年度までに」と明記されていたものが、成案では、「2010年代半ばまで」と修正したことになるが、与謝野担当大臣の6月30日の記者会見では、2010年代半ばとは、2014年から2016年までと述べている。

随所に新たな負担増計画
 医療の分野では、受診時定額負担が明記された。現行の定率負担に追加して、初診時および再診時に、毎回100円程度を追加して徴収するもので、今でさえ異常に高い医療費負担をさらに引き上げることになり、受診抑制に拍車がかかることは目に見えている。
 さらに、「医薬品の患者負担の見直し」を明記しているが、参考資料に「市販医薬品の価格水準も考慮して見直す」とされているだけで、具体的にどうするか記述されていない。市販品類似薬の保険給付からの除外、先発医薬品の薬価を後発医薬品の水準に引き下げ、差額を患者負担とするなどの案が検討されているとみられる。
 高齢者の医療費負担は、原案では、70歳から74歳の負担を2割に引き上げるとされていたが、成案では、高齢者医療制度の見直しの一つとして「自己負担割合の見直し」という表現に留めた。
 そのほか、外来受診の適正化、外来患者数5%減少、平均入院日数の短縮などの公的医療費抑制計画が随所に盛り込まれている。
 今回の成案には、工程表と費用試算が添えられており、今後、この工程表に沿って、早ければ秋の臨時国会に関連法案が提出され、国会での本格的な論議も開始されることとなる。

狙いは消費税増税と社会保障費の削減
 「社会保障・税一体改革案」は、税では、消費税増税と法人税引き下げを柱とし、社会保障は、国民に「自助」と「共助」を求め、国の「公助」を最小限に限定する方向を打ち出している。
 「公助」の限定化は、医療・介護・年金分野で顕著で、別表のような削減額まで試算している。
 「受診時定額負担」では、初診・再診の都度定率負担に加えて100円の追加徴収を行うことで、年1300億円の削減を見込む。医療給付費で4000億円の削減となる。
 「70歳から74歳の医療費2割負担」は、成案からは消えたが、高齢者の自己負担の見直しは残されており、1割が2割に引き上げられると、2011年度実績で2000億円の削減となる。
 「外来受診の適正化」では、電子化されたデータを市町村などの保険者が用いて、適正な受診を指導し、重複受診・重複検査・過剰薬剤投与などを削減することで1200億円削減する計画だ。2025年に外来患者数を現行ベースより5%減らすことを明記しており、受診抑制に繋がる恐れが高い。
 4300億円削減する対象とされた「入院患者の平均在院日数の短縮」では、高度急性期、一般急性期、亜急性期・回復期ごとの平均在院日数の短縮目標が掲げられている。
 「市町村国保」については、都道府県化が盛り込まれているが、市町村の一般会計からの繰り入れや市町村独自の減免制度が廃止される可能性が高く、国保加入者の保険料(税)が値上げされ、今まで以上に滞納者が増加する心配がある。
 「介護保険」では、介護施設の重点化などにより、2025年に、要介護認定者数を現行ベースより3%程度減らし、1800億円の削減を見込んでいる。
 「年金」では、支給開始年齢のさらなる引き上げを検討し、開始年齢の68歳から70歳への引上げを視野に検討するとし、1歳引上げる毎に5000億円程度の公費削減が見込まれている。
 また、年収1000万円以上の高所得者の年金額を減額して450億円削減する計画を立てている。

社会保障個人会計に直結―社会保障・税共通番号制度
 成案には、「社会保障・税に関わる共通番号制度の早期導入」が盛り込まれているが、成案をまとめた同日、政府・与党社会保障改革検討本部は、「社会保障・税に関わる番号大綱」も決定した。医療・介護、年金などの社会保障給付と納税、さらに災害時の本人確認にも活用できる「社会保障・税番号」を2015年から利用開始する計画である。
 低所得者対策を理由に、「社会保障・税共通番号制」を導入し、「社会保障個人会計」と「国民ID制度」創設につなげようとするものである。
 医療、介護、福祉の負担上限を設ける総合合算制度が成案に盛り込まれているが、世帯員ひとり一人について、年収総額と各制度の利用者負担の総額を把握・管理することが必要とされ、共通番号制の導入が前提となっている。「負担に見合う給付」を狙い、社会保険制度の否定につながる「社会保障個人会計」と国民背番号制といえる「社会保障・税共通番号制」の導入は撤回すべきである。

保険免責制の導入を主張―経済産業省・産業構造審議会
 経済産業省の産業構造審議会・基本政策部会が、6月30日に発表した「少子高齢化時代における活力ある経済社会に向けて―経済成長と持続可能な社会保障の好循環の実現―」の中間取りまとめでは、社会保障給付のあり方について、かなり踏み込んだ記述が見られる。
 医療・介護分野では、(1)軽微な療養に対する保険免責制の導入、(2)後発医薬品のある先発医薬品の薬価・自己負担の見直し、(3)市販品類似薬の保険対象からの除外、(4)軽度者の介護保険対象からの除外、(5)高齢者の自己負担の拡大などが露骨に盛り込まれており、注意が必要である。  

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