より良い医療制度をめざす活動

【10.04.25】請願署名の解説(下)

後期高齢者医療制度は速やかに廃止を

 現在、保険医協会が取り組んでいる「患者負担の軽減と後期高齢者医療制度の速やかな廃止を求める請願署名」の解説を前回に続いて掲載する。
 今回では、請願事項の2項目目「後期高齢者医療制度の廃止はなぜ必要か」を考えてみたい。

後期高齢者医療制度を高齢者が拒否された訳

 「医療費が際限なく上がっていく痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」
 後期高齢者医療制度導入を前に、厚生労働省の老人医療企画室室長補佐が語った言葉に、導入の狙いが端的に示されている。
 なぜ後期高齢者医療制度への批判が高まったかを思い起こしてみると、高齢者を特定の年齢で既存の医療保険から切り離し、別枠の制度の中で、「保険料の負担増を我慢するか、それとも安上がりの医療内容を受け入れるか」の選択を迫ったところにある。
 制度の狙いが、医療費の抑制にあることは、根拠法「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」の目的や国の責務に「医療費の適正化」が明記されていることにも示されている。
 また、後期高齢者診療料や終末期相談支援料などの差別医療の導入も世論の批判を浴びた。特定の年齢で受けられる医療に差別を設けている国は、世界に例をみないとの非難を受け、今年四月の診療報酬改定で正式に廃止された。
 国民の怒りの広がりを受けて、2008年4月、民主・共産・社民・国民新党の野党4党共同提案により、後期高齢者医療制度を廃止し、元の老人保健制度に戻す法案が提案され、同年6月には参議院で可決された。
 一旦成立した制度改悪を全面撤回する法案が、国会の一院で可決されたのは、戦後の憲政史上初めてのことだと言われている。

廃止後は老人保健に戻すことについて

 後期高齢者医療制度を廃止した後、どうするかについても様々な意見が出されている。
 後期高齢者医療制度を廃止し、老人保健制度に戻すための法案が参議院で審議された二年前の当時、与党(自民・公明)議員が「廃止後の対案を示さないのは無責任だ」と繰り返し非難した。
 このとき、廃止法案の提案者側として答弁に立った民主党の福山哲郎氏(現外務副大臣)は「今火事が起こっているのを消そうとしている最中に、新たな家の設計図がないから、新たな設計図を持ってこないと無責任だという議論は成り立たない」と明快に答弁している。
 また、2008年8月に保険医協会伏見会議室で愛知社保協の開いた「後期高齢者医療シンポジウム」で大塚耕平氏(現財務副大臣)は、「年齢で区切った医療保険制度は世界で類を見ない制度である。リスクの高い人を集めた保険制度が成り立つはずがない」と後期高齢者医療制度の問題点をズバリ指摘し、老人保健制度に戻すことを提起した。

「4年も待てない」 高齢者の率直な思い

 「今度の総選挙の結果で自公政権が退場したから、『後期高齢者』、この言葉も退場かと思っていた」
 昨年8月の総選挙で、後期高齢者医療制度の廃止を公約した政党が多数を占めた直後の高齢者の共通した思いである。
 しかしながら、新政権は、後期高齢者医療制度を四年かけて廃止し、新しい制度に移行させるとしているが、後期高齢者医療制度は、続ければ続けるだけ被害を広げることになる。
 「そんなに待てない」
 それが高齢者の率直な気持ちではないか。
 保険料は、後期高齢者の医療費と高齢者人口の増加に連動して2年ごとに自動的に値上がりする仕組みとなっている。
 この仕組みをそのまま適用すると、今年4月からの保険料は全国平均で14%も値上げされることになっていた。
 財政安定化基金の取り崩しなどで、値上げ幅が抑えられたが、それでも今年4月からの後期高齢者医療の平均保険料は31都道府県で引き上げられ、愛知県では、約5%(3660円)も値上げされた。
 制度が続く限り、毎日、4千人の人が75歳の誕生日を迎えると推測されており、3年間で400万人もの高齢者が後期高齢者医療制度に移されることになる。
 3年も4年も先送りして高齢者に肩身の狭い思いをさせるのは、あまりにも酷と言わねばならない。
 長寿を祝うことを許さない、非人道的な制度は速やかな廃止が望まれる。

「新制度」で差別の拡大が心配

 現在、厚労相の諮問機関「高齢者医療制度改革会議」で、後期高齢者医療制度廃止後の新制度が検討されている。
 新聞報道によると、改革案は、65歳以上の高齢者を国保に加入させて、都道府県単位に広域化する案が有力視されている。
 この案は、自公政権時代の舛添厚労相私案に近いもので、厚労省はこの案のみ財政試算も出している。
 この試算は、65歳以上の高齢者を国保に加入させた上で、65歳未満の現役世代と別勘定とする前提で組み立てられている。
 これでは、現行の年齢による差別と医療費抑制の仕組みを温存し、対象年齢を10歳拡大するだけとなりかねない。

後期高齢者医療制度廃止で「構造改革」路線と決別を

 もともと、後期高齢者医療制度は、小泉構造改革を象徴する制度として誕生した点を考えると、後期高齢者医療制度の廃止は、「構造改革」路線との決別の意味を持つ。
 今こそ、後期高齢者医療制度は速やかに廃止し、元の老人保健制度に戻すために、現在、保険医協会が提起している「患者負担軽減・後期高齢者医療制度廃止を求める請願署名」を広げ、国民的な世論を形成していくことが、強く求められている。

▲ このページの先頭にもどる