より良い医療制度をめざす活動

【08.01.15】Q&Aで考える「混合診療問題」

Q&Aで考える「混合診療問題」

Q&Aで考える「混合診療問題」 昨年十一月七日に東京地裁が「混合診療を禁止する法的な根拠がない」として保険適用部分は給付を受けることができるとの判断を示した問題で、協会は「保険で良い医療に逆行する」との理事会声明(本紙十一月二十五日号)を発表したが、改めて混合診療解禁の問題点についてQ&Aで考えてみたい。(一面の板津副理事長インタビューと合わせてご覧いただきたい。)
混合診療を認めた方が患者負担は軽くなるのか?

Q1 そもそも混合診療を解禁することにどのような問題があるのか。

A1 第一に、不当な患者負担の増大を招くこと、第二に、安全性・有効性の確保できない「医療」を助長し、結果的にその治療にかかわる医療に保険財源も使用されることである。

Q2 混合診療を解禁すると、なぜ患者負担が増大するのか、その理由は。

A2 全国二千七百四十六病院のうち、四十三%が赤字経営と言われる。このような経営状態の中で、混合診療が解禁され、なんの規制もない自由診療との併用が常態化すれば、病院側は、好むと好まざるとにかかわらず、様々な名目で自由診療部分の費用を増やす努力を払うことになる。
今でも、差額ベッド代などの徴収で少しでも収入増に努めており、技術料や治療行為にまで保険外診療が併用されたら、際限のない保険外負担の拡大に道を開くことになる。

Q3 混合診療を認めれば、保険外の診療を行っても、全額自費にならないで済むので、患者にとっては、負担が軽くなるのではないか。

A3 一見、負担が軽くなるように見えても、それはまったくの幻想である。保険外の費用徴収には、もともと上限設定も、標準料金もないので、保険部分が適用になれば、保険部分の自己負担が縮小されることを前提に保険外の料金を決めることになる。
したがって、公的医療費抑制策の下で、混合診療が解禁され、保険外負担が常態化すれば、患者負担は軽くなるどころか、かえって負担が増えることは間違いない。

Q4 混合診療を認めず、治療の機会を奪うのは、憲法が保障する生存権を侵害することになるのではないか。

A4 生存権を侵害するとすれば、混合診療を認めていないことではなく、保険適用をしていないことこそにあるのではないか。


がん未承認薬はどうあるべきか?

Q5 海外で標準的に使用されているがんの未承認薬問題は、どのように解決すればよいのか。

A5 世界標準となっている有効で安全な医薬品があるとすれば速やかに薬事法上の承認を行い、保険適用することが、本来の解決策である。
具体的な医薬品ごとに個別に検討することが大切である。

Q6 保険適用には時間がかかり、それまで待てない患者は多い。

A6 有効性と安全性が確立している医療技術は、普及性に係わらず速やかに中医協審議を経て、保険適用すべきであり、そのためのルールの透明化と迅速化を図るべきである。
薬事法上の承認後、保険収載まで三カ月のタイムラグがあるのも問題であり、薬事法上の承認と保険収載を同時にすすめることも必要である。

Q7 がん患者さんは「安全で有効だと判っているのに、保険で認められない薬がある。せめて、薬代だけ自費徴収を認めてほしい」と切望しているのではないか。

A7 がん患者さんが混合診療の解禁を求めているかのような宣伝がされているが、がん患者さんの本当の要望を反映した解決策とは言えない。
日本がん患者団体協議会は「良い医療や薬を保険で速やかに賄えるようにすることが本来のがん患者の願いであり、未承認薬の混合診療はあくまで緊急避難的な要求だった。国民皆保険制度を維持することは絶対に大切です。」と述べている。

Q8 それでも保険で適用されなかった場合に、その薬が使いたいのであれば、混合診療として認めたほうがよいのではないか。

A8 保険適用されなかった医薬品は、有効性や安全性等に問題が指摘されたものと考えられる。
このような薬の使用を混合診療として保険外で認めれば、結果的に問題のある医薬品の使用が野放しとされ、重大な副作用や薬害を生むおそれがある。保険外使用であっても、安易に認めるべきではない。

Q9 混合診療が解禁されると、新薬の開発者が保険収載の申請をしなかったり、遅らせたりする心配があるのではないか。

A9 その通りで、混合診療が解禁されると、新薬などが自由診療でも使いやすくなるので、保険収載される薬価基準の水準に不満を持つ開発者は、価格設定に縛られない自由診療での使用を優先し、保険収載の申請をしなくなる恐れがある。結果として、革新的な新薬の保険収載が遅れる可能性が危惧される。
逆に、混合診療が禁止されておれば、自由診療では普及が望めないので、開発者は積極的に保険収載の申請に努めることになる。

先進医療の取り扱いは?

Q10 現在、先進医療を評価療養として、保険診療と保険外診療との併用を認めていることについて、どう考えるか。

A10 標準医療は速やかな保険適用が必要であるが、先進医療は、有効性と安全性が確立している標準治療とは違い、実験治療という側面が強い。従って、先進医療は、評価療養として患者に保険外負担を強いる方法ではなく、国が研究費として負担すべきである。

Q11 岸田規制改革担当相と舛添厚労相が二〇〇七年十二月十七日に合意した「今年度内に厚労省通達を見直し、薬事法で未承認の医療機器や医薬品を使った先進医療も新たに混合診療の対象とする」方針について、どう考えるか。

A11 医療機器や医薬品は有効性と安全性が確立していることが必要であり、薬事法での承認をまず優先すべきである。
承認前の医療機器や医薬品を使った高度医療を評価療養で認めれば、結果的に使用を促進し、重大な健康被害を全国に広げるおそれがある。
薬事法で未承認の医療機器や医薬品を使った先進医療は評価療養として認めるべきではない。

Q12 保険診療は公費の支出を伴う以上、すべての医療行為を保険適用することは財政的に困難ではないか。

A12 それは国内総生産(GDP)に占める医療費の割合が極めて少ない現状を前提にした議論である。
保険外負担に財源を求めると、「お金のあるなし」で受けられる医療に格差が生まれる。
保険外負担の拡大ではなく公的医療費総枠を拡大すれば、保険適用で対応することは十分可能である。

保険外の治療の蓄積

Q13 混合診療がすすめば、新しい治療法や薬を試みやすくなり、保険診療の可否を決めるための臨床事例を多数収集できるようになるのではないか。

A13 実施体制やデータの管理体制が整備されていない医療機関で臨床事例を集約しても、薬事法上の承認審査に活用できるデータとならず、保険導入に資するものとならない。


混合診療解禁の本当の目的は?

Q14 混合診療解禁の本当の狙いは何か。

A14 第一の狙いは、公的医療保険の給付範囲を縮小することで、国の負担を減らすこと。
第二の狙いは、患者の保険外負担を増やすことによって、民間保険を売り出して、医療を儲けの対象にすることにある。
医療費の負担を民間保険に頼る方法は、マイケル・ムーア監督の映画「シッコ」にリアルに紹介されているように、企業利益が優先し、必要な医療が切り捨てられてしまう。
米国政府が、日本に「混合診療の解禁」と「株式会社による医療機関経営の解禁」を強く求めている点も見逃せない。
今、国民皆保険制度を守ることが何よりも大切だと考える。

Q15 「公的医療保険の給付範囲を縮小する」とは、具体的にどのようなことが想定されているのか。

A15 保険外し、保険給付範囲の縮小など、既に実施されたのは、百八十日を超えた入院、療養病床入院の生活療養費(食費+水光熱費)、リハビリの回数制限などがある。
今後、新たに混合診療の対象として検討されているものには、軽症医療、風邪薬、ビタミン剤など市販類似医薬品の保険外し、先発医薬品の使用、一定の基準(例えば三対一)を超えた看護配置、MRIなどの高度な医療機器の利用などがある。

Q16 混合診療を解禁して、民間保険の活用を図ろうとしている根拠はあるのか。

A16 財務省主計局がまとめた「医療制度改革の論点」(二〇〇一年十月)に、「公的医療保険の守備範囲の大幅な見直し」の項目を掲げ、その説明に、わざわざ「混合診療の拡大・民間保険等の活用」と明記している。
その上で、「より広範な医療サービスについて医療機関の費用徴収の自由度を拡大、患者から自由に費用徴収できるようにする、これにより民間保険の活用も活性化」と説明し、保険外し・混合診療解禁の対象として、MRIなどの高度医療機器の利用や手厚い介護体制の提供などを例示している。

【参考】
保険外併用療養費
「評価療養」
※安全・有効で効率的な技術が普及してきたら、保険導入する。(6種類)
(1)先進医療(899医療機関123技術)
(2)医薬品の治験に係る診療
(3)医療機器の治験に係る診療
(4)薬価基準収載前の承認医薬品の投与
(5)保険適用前の承認医療機器の使用
(6)薬価基準収載医薬品の適用外使用

「選定療養」
※患者の選択に委ねられた医療(10種類)
(1)特別の療養環境の提供(差額ベッド代)
(2)予約診療
(3)自己都合の時間外診療
(4)200床以上病院の紹介無し初診
(5)200床以上病院の再診
(6)制限回数を超える医療行為(腫瘍マーカー検査・リハビリなど7項目)
(7)180日を超える入院
(8)前歯部の材料差額
(9)金属床総義歯
(10)小児う蝕治療後の継続管理

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