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【07.02.25】レセプトオンライン請求義務化問題を考える シリーズ5(最終回)

レセプトオンライン請求義務化問題を考える シリーズ5(最終回)

問題を抱えながら4月から「試行」が稼動

 これまでのシリーズを振り返って、紹介できなかった事柄に触れつつ、レセプトのオンライン請求義務化が抱える問題を改めて整理してみたい。

日医・日歯は拙速な全面移行に反対

 この問題に対する日本医師会や日本歯科医師会の態度を紹介する。
 日医は、昨年8月8日付で、『オンライン請求義務化に関する日医見解』を発表した。その後、今年1月には中川常任理事が、「拙速な全面移行には反対」と記者会見などで強調している。「メディファクス」(1月11日付)によると、中川氏は「請求件数が少なくメリットが見いだせない医療機関にまで義務化するのではなく、導入可能な医療機関から参加するのが望ましい」「ITにさわることのない地域の名医を医療現場から退場させるような全面義務化には、継続的に反対していきたい」と強調したと伝えられる。
 また、日歯は1月25日の理事会で近藤副会長が、「『日歯としては従来の見解通り、基盤整備がなされていない状況において、オンライン請求が極めて短期間に義務化されれば、オンライン化に対応できない歯科医療機関は保険診療を行うことができず、結果的にその医療機関を“かかりつけ”にしてきた患者を診ることができなくなり、日本の歯科医療が混迷を極める』とし、同様な見解を持っている日医とともに反対していくことを確認した」(「日歯広報」2月15日号)と伝えられる。

「代行」にも課題 憲法違反の指摘も

 義務化にかかわって、省令には「請求の代行」の規定がある。オンライン請求ができない医療機関が請求を依頼することができるという規定だ。しかし、この内容の詳細はまだ明らかにされていない。
 想定されている範囲では代行団体になれるのは「医師会」「歯科医師会」などに限定されるといわれる。その場合でも、手書きのレセプトを一枚ずつ入力する作業を代行団体が請け負うとすると膨大な作業となり、費用や請求時期の遅れなど超えなければならない課題も多い。つまり、これが手書きで請求している医療機関にとって「救いの神」になるという保障はない。
 なお、請求方法を一つの方式しか認めず、それができない医療機関がそのために請求ができない、ということは憲法22条の職業選択の自由を犯すことを含め法律上にも問題がある。
 また、費用補償の問題では憲法29条の財産権侵害にふれる、セキュリティは個人情報保護法に違反するという指摘がある。

問題点は……

 今回のシリーズでは、できうる限り考えられる問題を紹介してきた。改めて、「問題点(メモ)」にまとめてみたので参考にされたい。
 このように多くの問題点を抱えながら、しかし義務化に向けた動きはすすんでいる。例えば、支払基金はこの4月から「試行的オンライン請求システム」を稼働させることを決めている。医療機関のメリットは、1.受付時間が延長、2.レセプトの事前チェックが可能、3.統計・分析に活用できる、などとしている。
 また、来年4月からは政管健保などでQRコードを装着した保険証を発行することが開始される。
 動きは予想以上に早いテンポですすんでいる。
(文責 事務局吉田)

レセプト・オンライン請求の義務化をめぐる問題点(メモ)

1.義務化により、それ以外の請求方式が認められなくなる問題
  →臨床経験豊かな第一線の医療機関が廃業を余儀なくされる
  →地域医療に深刻な影響→「代行」請求については詳細未だ不明
   〜費用問題〜ペナルティの話もある

2.デジタル・データとしての活用をめぐる問題
1)請求・審査・支払にかかわって
 →機械的・画一的審査
 →傷病名と診療行為のリンク付け、薬剤の適応のチェック強化
 →診療行為の「標準化」=個別性の否定=医師の裁量の制限
 →点数表の仕組みの変更
2)分析・集約・関連づけ〜活用が容易になる
 →個人情報としての医療・健康情報はが、利用のされ方次第で、メリットもデメリットも生まれる
 ・予防管理、健診管理などでのデータ利用
 ・保険給付の制限や保険料に連動しないか
 →財界サイドからは「民間活力」で儲けの対象に

3.セキュリティ、情報漏洩
 →「絶対安心」はありえない方式
 →個々の医療機関に対するセキュリティ対策を強制
 →漏洩の責任は医療機関に押しつけ
 →民間企業が漏洩した場合の責任は曖昧

4.費用負担
 →設備導入・メンテナンス・セキュリティ対策の費用への補償がない
 →事務経費の節減〜国民医療費全体が縮小できるかどうかは不明?

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