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【07.02.05】レセプトオンライン請求義務化問題を考える シリーズ3

レセプトオンライン請求義務化問題を考える シリーズ3

背景に財界サイドからの圧力が

強引とも思えるほどにオンライン請求の義務化を政府が推進してきた背景には、「規制改革・民間開放会議」や「経済財政諮問会議」などをバックにした財界の意向が強く反映されている。今回は義務化が決定してきた経過を振り返り、背景にあるものを考えてみたい。

供給コストの低減と「民間」活力が狙い

 経済財政諮問会議が最近まとめた「日本経済の進路と戦略」は今年の1月25日に閣議決定された。これは今後5年間を見通した経済政策に関する中期方針といわれる。ここでは、「レセプトオンライン化など、サービスの質の維持向上を図りつつ、効率化等により供給コストを低減させていくため」のものと明記されている。1月26日、安倍首相の施政方針演説では「レセプトの電子化などにより、医療費の適正化に努める」とも明記。つまり、供給コストの低減が狙いということになる。
 オンライン請求を含めた医療のIT化を強力に推進してきたものとして「規制改革・民間開放推進会議」があげられる。小泉「改革」の象徴として長く議長を務めた宮内義彦氏が医療への株式会社参入、混合診療解禁論者であることはあまりに有名だ。「推進会議」そのものは昨年末に最終答申を出し、安倍内閣のもとで今月編制替えをされるが、基本方針は受け継がれる。
 昨年発表された「3か年計画(再改定)」のうち、オンライン請求にかかわる部分の記述は「別掲(1)」のとおりだ。具体的な日程とともに、データの二次的利用が可能な形式にすること、請求をオンラインで行わない者について「ディス・インセンティブ」としてのいわゆるペナルティを設けるように求めている。また、データは、国が責任を持って蓄積・集約し、「ナショナル・データベースを構築」、その活用は「民間」もできるように「いたずらに利用を制限することのないよう」求めてもいる。これは、全く財界の身勝手な言い分だと思えるのだが、どうであろうか。
 日本経団連が1月1日に発表した『希望の国、日本』(御手洗ビジョン)でも、「医療・介護データベースを整備」など同様の主張をしている。

「医療改革大綱」が推進役に

 前回紹介した「グランドデザイン」によるIT化の方針は、必ずしも政府の描く目標の通りには進んでこなかった。しかし今回は、「義務化」という強力な圧力がかかっている。
 連載の第一回で紹介した具体的日程を含めた省令が昨年4月に出された背景には、政府・与党医療制度改革協議会がまとめた「医療制度改革大綱」(別掲(2))に日程も含めて明記されたことが大きい。その内容は、「推進会議」の方針そのものである。
さらに今回は、「別掲(3)」にあるように、医療保険改悪法案が参議院を通過されるにあたって採択された「付帯決議」にもこのオンライン化方針が明示された。これは流れを加速するものといえよう。なぜなら、この決議は改悪法案には反対した民主党が提案、共産党以外の政党が賛成して決まったものだからである。
(文責 事務局吉田)

別掲(1)「規制改革・民間開放推進3か年計画(再改定)」より

(2006年3月31日・閣議決定)
(個別的重点検討分野の改革)
1.医療分野
(3)医療のIT化の加速
1.電子レセプトによるオンライン請求化の確実な推進
 【速やかに着手、遅くとも 平成23 年度当初から原則完全オンライン化】

 レセプトについては、平成18 年度からオンライン請求化を進め、遅くとも平成23年度当初から、システム障害時や請求件数が極めて少ない場合を除き、医療機関・薬局等の医療関係機関、審査支払機関、保険者の何れにおいても、原則として全てのレセプトを、オンラインで提出及び受領しなければならないものとする。これらは法令上でも規定する。
 また、交換される電子レセプトのデータの形式については、実施された医療内容の分析などの2次的利用が可能なデータ形式であることとする。
 なお、オンライン請求の義務化以降、オンライン請求以外の方法によるレセプト提出については、ディス・インセンティブ(例えば、請求を受けつけない、オンライン請求を行えない者から追加費用を徴収する、支払期日を遅くする等)を適用することとする。
3.レセプトのデータベースの構築と利用環境の整備
 【逐次実施、平成22年度中までに措置】

 2次的な医療政策や疫学調査等のためのレセプトデータの利用・分析も目的とし、全レセプトデータを国の責任において確実に蓄積、集約し、全国規模のナショナル・データベースを構築するとともに、電子レセプトによる請求データ等のデータベース等の活用、研究等を活性化するため、民間等も含め活用する際、過度に厳重な要件を課していたずらに利用を制限することのないよう、個人情報保護に配慮しつつも、データ利用・分析に係る利用資格・手続き等の利用環境の整備を図る。



別掲(2)「医療制度改革大綱」より

(政府・与党医療制度改革協議会2005年12月1日)
III 医療費適正化の総合的な推進
1.医療給付費の伸びと国民の負担との均衡の確保
(5)レセプトIT化の推進等
 医療保険事務全体の効率化を図るため、医療機関等が審査支払機関に提出するレセプト及び審査支払機関が保険者に提出するレセプトについて、平成18年度からオンライン化を進め、平成23年度当初から、原則としてすべてのレセプトがオンラインで提出されるものとする。その際にはデータ分析が可能となるよう取り組む。
 また、オンライン化のための経費に対する支援などに積極的に取り組むとともに、レセプトオンライン請求に関する情報保護ガイドラインの作成等により、個人情報の保護等に十分配慮する。
 被保険者の利便性の向上等のため、被保険者証の個人カード化を推進する。



別掲(3)医療制度改革関連法案の採択時に採択された「附帯決議」より

(参議院厚生労働委員会・2006年6月13日)
7.レセプトのオンライン化については目標年次までの完全実施を確実なものとするよう努めるとともに、これと併せて個別の医療内容・単価の分かる領収証の発行の普及に努めること。

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