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【06.11.05】患者の機能を低下させるリハビリの日数制限 協会が緊急アンケートを実施

患者の機能を低下させるリハビリの日数制限 協会が緊急アンケートを実施

 4月診療報酬改定で導入された疾患別リハビリテーションの日数制限によってリハビリが打ち切られている。
 協会は保団連の呼びかけに応え、県内の「脳血管疾患等リハビリテーション料(I)」を届け出ている91医療機関に緊急アンケートを実施した。10月17日にアンケート用紙を送付し、緊急の要請にもかかわらず、わずか1週間で34医療機関(37.4%)から回答を得た。回答の内容や会員からの要望事項は保団連がまとめ、10月26日に実施した中央行動での厚労省交渉や国会議員への要請にも反映させた。アンケートの概要と、そこから浮かび上がっている問題を紹介する。

◇除外患者になる患者でも中止に

 保団連のまとめでは10月25日現在、20都府県・288医療機関から回答があった。
 今年の4月以前からリハビリを実施していた患者は経過措置が設けられ、4月1日から日数のカウントをすることとなった。しかし、9月27日には最も長い脳血管疾患でも180日とされた日数制限に到達し、以後は日数切れとなってしまっている。
 アンケートでは、そのためリハビリを継続できなくなる、あるいはすでに中止してしまった患者さんの数を尋ねた。その結果、25日現在集約された中止患者は6,873人に達した。このうち、愛知分は1,111人。
 中止した患者さんの問題となる疾患を尋ねたところ、脳血管疾患リハにかかわるほとんどの疾患があげられた。ここでの大きな問題は、算定日数制限除外対象患者の取扱いについてである。
 厚労省は例外措置として日数制限を除外できる対象患者の規定を設けた。しかし、具体的な取扱いの基準があいまいで、かつ周知徹底もされていないために、医療現場で無用な混乱を来している状況が浮き彫りになった。
 典型的には脳卒中患者に対する対応に見られる。脳卒中等の脳血管疾患により麻痺や後遺症を呈している患者が除外対象患者に入ることは、診療報酬改定後1カ月近くたった4月28日付の「疑義解釈」通知によって初めて明確にされた。そういう時間的な遅れと、さらにそれに加えて解釈の内容が非常に回りくどく、分かりづらいために理解が徹底されていない。告示には「脳卒中による後遺症」という病名の明示は一切無く、「障害者(児)リハビリテーション料に規定する患者」に含まれるから除外できるというのである。
 それでも厚労省は、疑義解釈を出したからそれで済んだと考えているようだが、実際に、脳卒中の後遺症患者が対象外になることを知らずにリハビリテーションを中止してしまった医療機関がある。ある所では、不十分な理解のせいで脳血管疾患リハをしている患者のうち3分の1を中止した。
 しかしより問題なのは、除外対象患者であれば無条件で除外になるわけではなく、「治療を継続することによって状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」という条件がつけられ、それを満たさないと日数制限から外すことができないということである。
 「状態の改善が期待できる」かどうかを判断するのは主治医となるが、審査機関によって減点されれば経営上、大きな損失になる。保険医協会が5月9日、厚労省保険局の麦谷医療課長(当時)と懇談した時、脳梗塞の後遺症でリハビリを続けている多田富雄東大名誉教授について、麦谷課長は「多田さんは除外される」と断言した。にもかかわらず、最近の報道によると、多田さんは「9月末、言語療法を打ち切られてしまった」(『日経新聞』10月8日付)という。記事では、「『規定の表現があいまいで、どこまで許されるか解釈が分かれる。後になって請求が認められなければ、経営が成り立たなくなってしまう』」という医療機関の「苦悩の声」を併せて紹介している。アンケートでも、「あいまいな基準を何とかして欲しい」という意見が多数寄せられた。
 少なくとも、審査における減点や、個別指導の指導対象項目にすることがないようにすべきである。

◇代替にはならない介護保険のリハ

 「状態の改善」についての解釈ともかかわって、アンケートでは状態を「維持」し続けることがリハビリテーションにとって大きな意義を持つということも多くの医療機関から指摘された。例えば、「高齢者の方に『改善を』というのは厳しい。維持も『改善』ととらえるべき」「機能向上が望めなくても悪化していくことが予測される症例(拘縮、呼吸状態、など)も存在するので、困る」などだ。
 厚労省は、維持期のリハビリテーションは医療保険でなく介護保険で行えば良い、という考えを示している。しかし、現実に介護保険のサービスが十分機能しているとは言い難い。ある医療機関では、88人の患者を中止したが、そのうち介護保険のリハビリに移行できたのは37人(42%)、その移行した患者さんのうち15人(41%)から2次障害として痛みが出たり、関節拘縮が出現したりして医療機関に「泣きついてきて」対応に苦慮している、という。
 このほか、現状では、介護保険のリハビリ(通所リハや訪問リハ)は、機能維持を目的とするためでも量・質両面で不十分だと判断する意見が多数寄せられた。

◇対応に苦慮する医療機関

 中止した患者への対応に苦慮している医療機関の姿も浮かんでいる。
 対応の内容は、介護保険のサービスを紹介、自主トレ(ホームエクササイズ)の指導などだ。だが、これらで課題が解決していると考えているわけではない。そこで、無料で体操などへ参加を呼びかけたり、あるいは無料で機能評価や指導を行っている医療機関もある。
 結局、これらの事態は今回の診療報酬改定が全体としてマイナス改定を前提として行われているがために、起こっている矛盾といえよう。

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