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【05.07.05】Q&Aで考える混合診療問題

Q&Aで考える混合診療問題

 混合診療拡大の動きが議論されているが、中には、混合診療の定義を誤解して、「こんな面倒な規制があるくらいなら、混合診療を解禁してもらったほうがいい」とか、「せめて特定療養費にしてもらえば、患者さんの負担が軽くなるのではないか」などの声も聞かれる。まず、現行医療保険制度の混合診療禁止の定義を共通認識にした上で、混合診療の解禁や拡大の問題点を考えてみた。

混合診療の禁止とは?


Q1 混合診療の禁止の定義を教えてほしい。
A1 
混合診療の禁止とは、「一連の診療について、保険診療と保険外診療との併用を認めない」ことをいう。従って、一連の診療中に、健康保険で定められた自己負担以外の費用は原則として徴収できない。

Q2 日を変えれば、保険診療と保険外診療が混在しても、混合診療に該当しないか。
A2 
同一の病気の診療で、「保険→自費→保険」というように、一連の診療の中に、保険と自費が混在する場合は、日が違っても混合診療に該当する。

混合診療の禁止に該当しないケース


Q3 腰痛で治療中に、「血液型の検査をしてほしい」と要望されたが、混合診療になるので、日を改めて来院してもらわなければならないのか。
A3 
保険診療から独立して行われる健診や予防的処置は混合診療に該当しない。従って、ある病気で診療中に、血液型検査や健康診断、予防接種などを行い、費用を徴収することは、問題ない。

Q4 健診(自費)の結果、病気が発見され、その病気について、その日の内に保険診療を開始した場合は、混合診療になるのか。
A4 
混合診療に該当しない。例えば、健康診断で内視鏡検査を実施し、異状が見つかったために、そのまま組織採取を行った場合は、内視鏡検査は自費徴収し、内視鏡下生検法、病理組織検査を保険請求することが認められている。

歯科分野の混合診療とは?


Q5 歯科には、既に混合診療が導入されているのか。
A5 
歯科領域では、現在、2種類の混合診療が行われている。
ひとつは、特定療養費で、こちらは医科と同じである。ただし、完全に技術料差額が入っている点で歯科特有の特殊な面も存在している。
 もうひとつは、「一連の診療で保険から自費に切り替える混合診療」である。厚労省通知で認められた合法的な「混合診療」だ。
 詰めものを詰めたり、冠をかぶせる、あるいは入れ歯を入れるという歯科医療の日常的な治療においても、使用する材料などによって、保険診療で可能な治療と、自費診療に切り替わる治療が存在することになる。歯科医院で、「これから先は、保険でやりますか? 自費にしますか?」と聞かれることがあるが、医科では通常ありえないことだ。

Q6 なぜ、歯科だけ日常診療に保険のきかない医療が多く残っているのか。
A6 
医科では、新技術や新薬は次々と保険適用されてきたが、歯科では、すぐれた治療材料である金合金やセラミックスを使った治療、あるいは新しい医療技術が、政府の歯科医療費抑制策のもとで保険導入されてこなかったことが一番の理由である。

Q7 「混合診療反対」と聞くと、現在歯科で行われている混合診療を非難されているように聞こえるが。
A7 
現在合法的に行われている補綴診療の自費への移行などを問題としているのではない。歯科の場合、歴史的制約があるため、現状の保険外の材料や技術がすべて直ちに保険で認められることは困難かも知れない。しかし、一般的に普及し、優れた材料や技術は、保険で受けられるようにするのが本来の姿だといえる。

混合診療解禁で負担軽減?


Q8 混合診療を認めれば、保険外の診療を行っても、全額自費にならないで済むので、患者さんにとっては、負担が軽くなるのでは。
A8 
一見、負担が軽くなるように見せて、実は大きな問題を含んでいる。もともと政府の混合診療拡大の狙いは、公的医療費の削減にあるため、少しでも保険給付範囲を縮小しようとしている。既に保険で認められているものまで、混合診療の対象に加えてくる危険性が高い。事実、180日超の入院で実証済みである。

がん未承認薬はどうあるべきか


Q9 安全で有効だと判っているのに、保険で認められない薬がある。せめて、薬代だけ自費徴収を認めてほしいと、がん患者さんは切望しているのではないか。
A9 
がん患者さんが混合診療の解禁を求めているかのような宣伝がされているが、がん患者さんの本当の要望を反映した解決策とは言えない。
 日本がん患者団体協議会は「良い医療や薬を保険で速やかに賄えるようにすることが本来のがん患者の願いであり、未承認薬の混合診療はあくまで緊急避難的な要求だった。国民皆保険制度を維持することは絶対に大切です。」と述べている。

Q10 では、がんの未承認薬問題は、どのように解決すればよいのか。
A10 
世界標準となっている有効で安全な薬は速やかに保険適用することが、本来の解決策だ。福島雅典教授(京都大学医学部付属病院)は、「速やかに承認し、保険診療で使うことができるようにする――それがこの議論の本質だ。それがなぜ、患者が全額負担する自由診療にすり替わってしまうのか」(月刊現代05年1月号)と指摘している。

大病院は混合診療を待望?


Q11 東大・京大・阪大の3大学病院長が「特定療養費制度の抜本的改革もしくは混合診療の導入」を求める要望書を提出したように、大病院は混合診療解禁を要望しているのでは?
A11 
確かに、3大学病院長が出した要望書は、「特定療養費制度の抜本的改革を含む規制緩和」を求めているが、先端医療・高次医療が健康保険に適用されても、保険上の制約が多く、必要な人的・物的資源をまかなう経費が保証されていない問題点を指摘し、あらゆる医療が健康保険によって給付されることが理想だということを述べている。
 また、4月に開催された日本内科学会「医療サミット」では、高久日本医学会会長、黒川日本学術会議議長、岸本前阪大総長の3人が、医療事故も起こらざるを得ない現状を指摘し、「日本の医療は本来70兆円必要で、現状との開きが混合診療等の発想を生んでいる」と述べている。

Q12 点数改定がされるたびに検査やリハビリなど、どんどん制限回数が設けられている。制限回数を超えた部分は自費徴収を認めてもらった方が良いのではないか。
A12 
医学的に必要な範囲まで制限回数を設けてきたことが問題だ。さらに制限が強まると、ゆくゆくは、「すべての保険点数に標準回数を設定し、回数を超える医療サービスは、差額徴収の対象とする」(04年7月11日・宮崎での西山前医療課長の講演)といったことになりかねない。

なぜ混合診療を解禁したがる?


Q13 混合診療解禁の狙いは何か。
A13 
第一の狙いは、公的医療保険の給付範囲を縮小することで、国の負担を減らすこと。第二の狙いは、患者の保険外負担を増やすことによって、民間保険を売り出して、医療を儲けの対象にすることにある。

Q14 混合診療解禁を推進しようとしている人たちに民間保険会社の人たちが入っていると聞くが。
A14 
混合診療解禁を強く主張しているのは、政府の規制改革・民間開放推進会議だが、その事務局には、政府機関でありながら、27人の室員のうち、14人がトヨタ自動車などの民間企業の出向者で、しかも、そのうちの6人がオリックス、セコム、東京海上などの民間保険会社の出向者である。

Q15 保険外しのターゲットにされているものは。
A15 
保険外し・混合診療の対象として、入院の食事や部屋代(ホテルコスト)、軽症医療、風邪薬・ビタミン剤など市販類似医薬品の保険外し、先発医薬品への特定療養費の導入、一定の基準(例えば4対1)を超えた看護配置、MRIなどの高度な医療機器の利用などが検討対象にされている。

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