より良い医療制度をめざす活動

【05.06.25】急速に進められる混合診療の拡大

急速にすすめられる混合診療の拡大

 昨年12月に尾辻厚労大臣と村上規制改革大臣との間で交わされた「いわゆる『混合診療』問題に係る基本合意」に基づき、「制限回数を超える医療行為」および「必ずしも高度でない先進医療」の特定療養費化の動きが急速にすすめられている。このうち「制限回数を超える医療行為」は、検査・リハビリなどの二十八項目が新たな混合診療の対象項目としてあげられ、6月29日に開かれる中医協・診療報酬基本問題小委員会に報告される。 ただ、具体的な検討はこれにとどまらず、在宅患者訪問診療料などが引き続き継続的に審議する項目として残っている。また、「必ずしも高度でない先進医療」は、特定療養費制度の選定療養として、七月から希望する医療機関の申請を受け付けることとなる。

制限回数を超える医療・まず28項目を特定療養費化か


 「制限回数を超える医療行為」は、中医協診療報酬調査専門組織の医療技術評価分科会で、4月22日、5月18日、6月15日と三回にわたって検討されてきた。
 検討内容は、現行点数表で制限回数が設定された415項目のうち、「そもそも制限回数を超えることが想定できない項目」(147項目)と「患者が要望することが想定できない項目」(126項目)を除いた医療技術(142項目)について、新たに混合診療を認めるかどうかが議論されてきた。
 そして、6月15日の分科会では、腫瘍マーカーや感染症血清反応(ヘリコバクター・ピロリ抗体)、細菌培養同定検査(迅速ウレアーゼ試験)などの検査やリハビリテーションなど、28項目(資料1)が、「新たに混合診療を認めることが適当と考えられる」との検討結果をまとめた。
 そのほかの項目は、「患者要望よりも医療上の必要性の観点が優先され実施される蓋然性が高いと考えられる項目」(113項目)(資料2)と「制限回数を超える場合に悪影響が懸念される項目」(1項目)に分類された。
 このうち113項目にはPSAの精密測定や在宅患者訪問診療料などが含まれ、保険給付との併用について継続して審議する取扱いとされている。
 制限回数を超える医療行為を患者負担とすることについては、5月18日の分科会の議論で、「医学的に必要なものは保険給付すべき」、「混合診療を認めて患者さんに払わせるのは反対。支払基金で保険請求を認めたらいい」などの意見が出され、吉田分科会長も「(支払基金等の)審査委員会で黙認しろという形をとらないと医療現場は混乱する」と混合診療の容認に否定的な考えを示していた。
 今回の分科会報告でも、リハビリテーションと精神科専門療法については、「患者のニーズに基づいて保険給付との併用(混合診療)を認めるべき」との意見がある一方、「保険給付との併用を認めるべきではなく、医療上の必要性の観点から制限回数を超える部分に関しても保険適用とすべき」との意見があり、基本問題小委員会には、両意見を含め報告されることになった。

医療現場に混乱持ち込む根拠不明な医療の費用徴収


 そもそも「制限回数を超える医療行為」については、12月の基本合意でも「医学的な根拠が明確なものについては、保険導入を検討する」と明記されている。
 そうであれば、「制限回数を超える医療行為」を混合診療の対象にするということは「医学的に根拠のない医療行為を患者負担させる」こととなり、ある意味では、ペテン的な費用徴収を容認してしまうこととなる。
 一旦、「制限回数を超える医療行為」を混合診療の対象とする手法を認めてしまうと、今後、際限ない対象範囲の拡大を招き、究極的には「すべての保険点数に標準回数を設定し、回数を超える医療サービスは、特定療養費の対象とする」(04年7月11日・宮崎での西山前医療課長の講演)といった危険な道に踏み出すことになりかねない。

必ずしも高度でない先進医療は7月スタート


 一方、「必ずしも高度でない先進医療」の混合診療問題への対応は、新たに厚労相の下に設置された「先進医療専門家会議」で科学的評価と医療機関の要件設定などが検討され、これまでに5月9日、6月2日の二回、会合が開かれている。
 会議のメンバーは、専門分野ごとに選ばれた20人の専門家で構成し、5月9日の初会合で、座長に、現在高度先進医療専門家会議の座長を務める猿田享男氏(慶應義塾常任理事)を選出。
 その後、厚労省医療課は、現行の高度先進医療と今回の「必ずしも高度でない先進医療」の今後の扱いについて、次のように説明した。
 (1)2006年の制度「改正」で、現行の特定療養費制度を廃止し、高度先進医療と高度でない先進医療を「保険導入検討医療(仮称)として一本化し、ふたつの専門家会議も合併する。
 (2)2006年度の制度「改正」までは、高度でない先進医療は、当面の対応として特定療養費制度の「選定療養」に位置づける。
 6月2日の第二回会合では、厚労省事務局から、評価方法、評価基準、医療機関の届出様式などが示された。
 科学的評価の流れは、(1)医療機関が実施したい先進医療の届出書を社会保険事務局に提出、(2)新規技術の場合は、厚労省は書類審査を経て、先進医療専門家会議に評価依頼、(3)評価結果を地方社会保険事務局経由で医療機関に通知、(4)妥当と評価されるとその保険医療機関の届け出た先進医療は混合診療の対象となる。
 先進医療に係わる施設要件は、担当医師、医療機関、その他の三つの領域で設定する。
「必ずしも高度でない先進医療」は、現行の特定療養費制度の「選定療養」の一類型として、7月から適用されることとなり、実施時期、性格ともに、異例づくめのスタートといえる。

(資料1)混合診療を認めることを「適当」とした項目

(05.6.15・中医協・分科会)  神奈川協会「混合診療25問題ニュース」より
診療行為制限回数概要
検 査
悪性腫瘍特異物質治療管理料(AFP、IAP、BTA)月1回
悪性腫瘍特異物質治療管理料(腫瘍マーカー)月1回
血液化学検査(1,25ジヒドロキシビタミンD3)治療開始後月2回、3月1回
腫瘍マーカー(PSA精密測定を除く)がんの確定までに月1回
感染症血清反応(ヘリコバクター・ピロリ抗体)1項目+陰性の際に1回
感染症血清反応(ヘリコバクター・ピロリ抗体精密測定)1項目+陰性の際に1回
感染症血清反応(HIV−1抗体価)輸血・輸注につき1回
感染症血清反応(HIV−1,2抗体価)輸血・輸注につき1回
細菌培養同定検査等(消化管からの検体・ヘリコバクター・ピロリの培養法)1項目+陰性の際に1回
細菌培養同定検査等(迅速ウレアーゼ試験)1項目+陰性の際に1回
細菌培養同定検査等(尿素呼気試験)1項目+陰性の際に1回
微生物核酸同定・定量検査(SARSコロナウイルス核酸増幅検査)診断確定まで1回+1回
病理組織顕微鏡検査(ヘリコバクター・ピロリの鏡検法)1項目+陰性の際に1回
残尿測定検査月2回
骨塩定量検査4カ月に1回
ノンストレステスト1週間1回
補聴器適合検査月2回
リハビリテーション
リハビリテーション(理学療法・作業療法・言語聴覚療法)1日合計4単位
理学療法(個別療法)1日3単位
理学療法(集団療法)1日2単位(月8単位限度)
作業療法(個別療法)1日3単位
作業療法(集団療法)1日2単位(月8単位限度)
言語聴覚療法(個別療法)1日3単位
言語聴覚療法(集団療法)1日2単位(月8単位限度)
摂食機能療法月4回
精神科専門療法
精神科デイ・ケア初回から3年後は週5日限度
精神科ナイト・ケア初回から3年後は週5日限度
精神科デイ・ナイト・ケア初回から3年後は週5日限度


(資料2)継続的に審議するとされた項目(主なもの)

検査
特定疾患治療管理料・特定薬剤治療管理料
尿中特殊物質定性定量検査(尿中/アルブミン定量精密測定/?型コラーゲン定量精密測定)
穿刺液・採取液検査(SP-A)
血液形態・機能検査(HbA1/HbA1c)
血液細胞核酸増幅同定検査(造血器腫瘍核酸増幅同定検査)
血液化学検査(フルクトサミン/マンガン/グリコアルブミン/1,5AG/心筋トロポニンT定性/ヘパリン/リポ蛋白(a)精密測定/NTx精密測定/尿中デオキシピリジノリン精密測定/アセトアミノフェン精密測定/心室筋ミオシン軽鎖I精密測定/RLP/BNP精密測定)
腫瘍マーカー(PSA精密測定)
病理組織顕微鏡検査
体液量等測定(皮弁血流検査/電子授受式発消色性インジケーター使用皮膚表面温度測定)
脈派図,心機図,ポリグラフ検査(脈派図,心機図,ポリグラフ検査実施料)
直腸肛門機能検査
神経磁気診断
汎網膜硝子体検査
眼底カメラ撮影(インスタントフィルムの費用)
細隙燈顕微鏡検査(前眼部及び後眼部/同 後生体染色再検査/同 インスタントフィルムの費用)
角膜形状解析検査
細隙燈顕微鏡検査(前眼部)(後生体染色再検査/同 インスタントフィルムの費用)
血管内視鏡検査

在宅医療
在宅患者訪問診療料
在宅患者訪問看護・指導料
在宅訪問リハビリテーション指導管理料
在宅患者訪問薬剤管理指導料
在宅患者訪問栄養食事指導料

リハビリテーション
リハビリテーション総合計画評価料(入院患者/外来患者)

精神科専門療法
入院精神療法(入院精神療法(I)/入院精神療法(II))
通院精神療法
心身医学療法(入院患者/外来患者)
入院集団精神療法
通院集団精神療法
入院生活技能訓練療法
精神科退院前訪問指導料
精神科訪問看護・指導料

処置
人工腎臓
持続緩徐式血液濾過術(重症急性膵炎の患者/劇症肝炎,術後肝不全又はこれらと同程度の急性肝不全の患者)
血漿交換療法(多発性骨髄腫,マクログロブリン血症/劇症肝炎/薬物中毒/重症筋無力症/悪性関節リウマチ/全身性エリテマトーデス/血栓性血小板減少性紫斑病/術後肝不全/急性肝不全/多発性硬化症,慢性炎症性脱髄性多発根神経炎/ギラン・バレー症候群/天疱瘡,類天疱瘡/巣状糸球体硬化症/家族性高コレステロール血症/閉塞性動脈硬化症/同種腎移植)
血球成分除去療法(潰瘍性大腸炎/薬物療法抵抗する関節リウマチ)
救急処置としての体表面ペーシング法・食道ペーシング法
皮膚レーザー照射療法(色素レーザー照射療法・照射面積加算)
皮膚レーザー照射療法(Qスイッチ付レーザー照射療法・Qスイッチ付ルビーレーザー照射療法)
間歇的導尿
冷却痔処置
干渉低周波による膀胱等刺激法

手術
(一)自動吻合器,自動縫合器等加算
(二)その他
組織拡張器による再建手術/難治性骨折電磁波電気治療法/リーメンビューゲル法/椎弓切除術(椎間加算)/椎弓形成手術(椎間加算)/椎間板摘出術(経皮的髄核摘出術)/脊椎固定術(椎間加算)/内視鏡的消化管止血術/小腸結腸内視鏡的止血術

麻酔
神経ブロック(神経破壊剤使用)
トリガーポイント注射

特定保険医療材料
皮膚欠損用創傷被覆材
デキストラノマー

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