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【18.02.15】歯科医療と隣接医学研究会報告

骨吸収抑制薬投与中患者の歯科治療の留意点
〜顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016を中心に〜(下)
歯科学術委員 浅野 辰則



 前回2月5日号につづき、2017年12月2日(土)に開催した「歯科医療と隣接医学研究会」講演の概要を掲載する。

○侵襲的歯科治療(抜歯、根尖および歯周外科等)時の休薬について
 やむを得ず侵襲的歯科治療が必要な場合、基本的には休薬を行わず、侵襲は最小限に抑える。これは、休薬で顎骨壊死が減少する可能性が少なく骨折リスクのみが高まるとする見解から、侵襲的歯科治療前のBP製剤休薬を積極的に支持する根拠に欠け、休薬が疑問視されているからである。今は相当な外科的侵襲でなければ、休薬しない施設が多い傾向にある。
 ただし、BP治療が4年以上の場合はBRONJの発生率が増加するとし、2カ月前後の休薬を検討することを米国口腔顎顔面外科学会は推奨している。
○術前の抗菌薬の投与
 侵襲的歯科治療の場合の術前抗菌剤投与に関しては、治療の直前で問題ない。術中に有効血中濃度が得られれば良いので、経口であれば処置直前の食後でよい。
 薬剤は第一世代のものでサワシリン、ペニシリンまたはダラシンなどで十分。投与期間は手術後24時間でよい。感染傾向があれば随時追加する。感染化学療法学会が推奨する使い方で行うこと。
○ARONJの治療と管理
 基本方針は、(1)骨壊死領域の進展を抑える、(2)症状の緩和と感染制御によりQOLを維持する、(3)患者教育と経過観察を定期的に行い口腔管理の徹底をする――の3つがあげられる。
 以前は保存的療法であったが、最近はステージ2以上のARONJに対して外科的療法を勧める傾向にある。病変部を完全に切除し、術創を閉鎖創にすることで治癒率が高くなってきている。また外科的療法は大きく分けると、(1)積極的な根治的外科手術、(2)低侵襲な保存的外科治療――の2つに分かれる。
○低侵襲保存的外科治療
 壊死骨周囲の歯肉を切除し、露出した壊死骨だけを可及的に削除・減量して洗浄しやすい形態にする。含嗽でも十分洗浄効果が得られるように管理することで、腐骨分離を促し粘膜上皮が被覆してくる。
 低侵襲で全身麻酔を必要とせず、歯槽突起レベルの骨壊死であれば開業医でも処置が可能となる。含嗽と定期通院でコントロールができる利点を持ち、かなり有効であり、病診連携においても利便的な治療となり得る。
○外科治療後の骨吸収抑制剤の休薬と再開時期
 術創が治癒するまでの間は、医科主治医と総合的に判断して検討する。休薬した場合は、治療部位が十分な骨性治癒が見られる2カ月前後がのぞましいが、少なくとも術創部が上皮化する2週間を待ち、感染がないことを確認して再開する。
○骨粗鬆症治療患者においての医科と歯科の連携
 患者さんが、適切な治療が受けられないという不利益を被ることを防止するため、我々歯科も骨吸収抑制薬に関してよく勉強し、医科・歯科が互いの専門性を活かしながら最良の選択を行うことが大切となる。周術期も含め、口腔内を綺麗にすること、またそのための患者教育、さらに患者からの病歴聴取が重要で、我々歯科がまず始めるべき第一歩としなければならない。
○寄せられた質問から
(1)骨吸収抑制剤投与中に外科的処置をしてしまった場合に、顎骨壊死が起こる確率は? またその時の対応は?
(答)骨粗鬆症で経口投与の場合は0.1%以下、注射の場合は数値がもう少し増える。患者には、支障が出る可能性については伝えるべき。

(2)口腔外科に外科処置を依頼した方が無難なケースは?
(答)顎骨の状態が不明瞭で、骨壊死が起きているのか判断しかねる場合と症状がありそうな場合は、口腔外科に送りスクリーニングするのがよい。

(3)休薬すれば抜歯は可能か?
(答)今のところ、休薬しなくても抜歯は可能。

(4)スケーリング、SRPなどの歯周治療に関しては特に問題はないか?
(答)いいと思う。外科的侵襲をするより歯周からの感染原因を除去するという意味では行うべき。放置して症状が進む方のリスクが高い。
○あとがき
 骨吸収抑制剤を投与される患者は、今後も増えることが予想される。今後もARONJに対する正確な情報に注意を払い、その方々の歯科治療に臨んでいく必要がある。
(おわり)

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