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【16.11.25】歯科医療と隣接医学研究会報告

糖尿病を有する患者さんの歯科治療の留意点(下)
歯科学術委員 荒尾 和子


 11月15日号につづいて、9月24日(土)に開催した「歯科治療と隣接医学研究会 糖尿病を有する患者さんの歯科治療の留意点」の講演概要を掲載する。

○低血糖症について
 主にインスリン過剰とグルコース供給不足による急性合併症であり、血糖値と症状は必ずしも一致せず、血糖降下速度が早くても症状が出る。自律神経障害のある患者、低血糖を繰り返す患者は無自覚低血糖になりやすい。検査後もグルコース不足が再び起こることがあるため、原則30〜60分後に再検査することが望ましい。

○低血糖時の症状
 動悸と冷や汗が多いが、その症状は多様で気づかないでいることも多い。症状の現れ方、順序はその人によって大体一致しているので、気をつけて覚えておかなければならない。
・自律神経症状…発汗、動悸、振戦、熱感、脱力感、荒い呼吸、など。
・脳機能低下の症状…めまい、しびれ、耳鳴り、考えがまとまらない、単純作業でミスをする、失語、ろれつが回らない、千鳥足(協調運動拙劣)、二重視、など。
・気分の異常…冷静になれない、喧嘩ごし(怒り)、頑固、悲しみ、不幸感、抑うつ的、多幸感、など(後藤由夫 千万人の糖尿病教室 文光堂 2006より)。

○低血糖時の対処法
 患者の意識がある場合は、ブドウ糖を5〜10g含むものや、砂糖を10gまたはブドウ糖を含むジュースを150〜200ml摂る。15分後に変化がなければもう一度同じように服用する。ブドウ糖、砂糖以外の糖分は、効果が現れるのが遅くなる。また、グルコオキシダーゼ阻害薬を服用している場合、必ずブドウ糖を与える。砂糖などの多糖類では、吸収が抑制されてしまうので低血糖への対処にならない。
 患者の意識が朦朧とし、ブドウ糖を自分で飲むことができない場合は、口腔内の唇や歯肉にブドウ糖あるいは砂糖を塗りつけて、すぐに主治医へ受診させる。あるいは、グルカゴン1バイアル(1mg)を注射する。その後、医療機関へ受診させる。

○浸潤麻酔や伝達麻酔使用時の注意点
 麻酔薬そのものに含まれているエピネフリンよりも、不安や痛みによって体の中で生産されるエピネフリン(内因性カテコルアミン)の方が数百倍の量になる。これによって血圧が一気に上昇すると、脳血管障害を引き起こす危険性がある。

○術後感染予防のための抗生剤投与の注意事項
・サワシリン(アモキシリン)…ワルファリンの作用が増強、避妊薬の作用を減弱する可能性がある。
・ケフラール(セファクロル)…持続性顆粒(L)と胃腸薬(制酸剤)の同時服用を避ける。2時間以上あければ可。
・第三世代セフェム系抗生物質における5つの問題について。
(1)バイオアベイラビリティ(生物学的利用能)が低い(表)
(2)殺菌対象が限定される
(3)偽膜性胃腸炎を起こしやすい
(4)小児では重篤な低カルニチン症 低血糖のリスクがある
(5)耐性菌が増えて、本当に必要な時の効果が減じてしまう
 バイオアベイラビリティ(bioavailability)とは、投与された薬物(製剤)がどれだけ全身循環血中に到達し作用するかの指標である。バイオアベイラビリティが低いということは、投与された薬の消化管吸収が悪く体中に行き渡りにくいということである。すなわち、感染症に効果があまりないことを意味する。  

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