会員のページ

【13.01.15】第27回愛知県開業医医療研究会を開催

糖尿病や関連疾患の連携を目指して

 協会地域医療部は、12月9日(日)午後1時から、協会伏見会議室で第27回愛知県開業医医療研究会を開催し、医師・歯科医師あわせて39人が参加した。
 今年は「糖尿病と関連疾患における連携」をテーマに、4人の話題提供者から糖尿病や関連疾患の治療について、また病診連携や他科との連携の実態や課題について報告があった。
 報告者は、三浦義孝氏(みうら内科クリニック・名東区)、川久保明利氏(池浦クリニック・安城市)、安藤文隆氏(アイケア名古屋・中村区)、橋詰義幸氏(みなと歯科診療所・港区)の4氏。
 糖尿病治療は、近年インクレチン関連薬が登場し、また地域医療計画にも五疾病に位置づけられ、病診連携や他科との連携による早期治療や管理が重要となってきている。
 これらの背景を踏まえ、三浦氏は今後増加する糖尿病患者に対して、診断と治療だけではなく、患者の背景を知る全人的な診療が重要だとし、臨床での注意点について具体的数値を示しながら解説した。
 安城市の基幹病院や他科と連携に取り組んでいる川久保氏は、特に歯科との連携において、診療情報提供書を算定した患者全てが症状照会に関する回答書だったとし、歯科との連携について問題提起した。
 安藤氏は、糖尿病関連疾患である糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫について、多くの症例を示しながら解説。治療が遅れると失明する恐れもあることから、内科との連携による早期発見、早期治療の必要性を強調した。
 歯科医師の立場から橋詰氏は、日本糖尿病協会の糖尿病連携手帳や千葉県保険医協会作成の連携カードを紹介しながら、医科歯科連携の現状と今後の課題について報告した。
 報告後は、参加者から医科歯科連携などについて活発な質疑・意見交流がなされ、司会の榊原利典地域医療部員が、「現状では連携には課題も多いが、医科歯科一体となって活動できる保険医協会の強みを生かせるよう、今後も活動・交流していきたい」とまとめた。

第27回愛知県開業医医療研究会
糖尿病と関連疾患における連携

報告者の概要は次の通り(文責事務局)

新時代の糖尿病治療
三浦義孝氏・みうら内科クリニック院長(名東区)


 糖尿病治療の困難さの一つに、治癒という言葉が当てはまらない疾患であるということが挙げられる。その意味では、糖尿病治療の目標は健康な人と変わらない生活の質を保つことにある。そこで大切になってくるのは合併症を防ぐことである。
 日本では糖尿病が強く疑われる人および可能性が否定できない人(予備軍)が、1990年に755万人だったのが、2007年には2210万人と増加している(厚労省調べ)。原因として挙げられるのは、食生活の変化と運動不足だ。
 糖尿病に伴う合併症は大きく分類して、糖尿病網膜症などの細小血管障害、心筋梗塞などの大血管障害、アルツハイマー病、癌となる。糖尿病患者のアルツハイマー型認知症の発症リスクはそうでない人に比べ2.2倍、脳血管性認知症は2.8倍、発癌リスクも前立腺癌を除くと1.14倍〜2.5倍と大きくなる。
 治療については、初期からの厳格な血糖コントロールを行い、高血圧を放置しない、ただし低血糖には注意することが大切である。これまでは患者全員にHbA1cを下げることをすれば良いと考えられてきたが、最近は患者の自己管理能力の有無や病歴、余命など状況に応じて治療を行うべきという考えになってきている。すなわち疾患だけを診るのではなく、患者の背景や気持ちをみる全人的な診療が重要である。
 糖尿病治療薬は、1950年代にSU剤が60年代にBG剤が登場して暫くは新薬が発売されなかったが、90年代に入ってα−GI薬、非SU系インスリン分泌系薬、インクレチン製剤が登場し、今後も治療薬が登場する予定で患者の病態にあわせた薬の選択ができ、糖尿病治療も新時代に入ったと思う。

当院における、診診・病診連携の現状
川久保明利氏・池浦クリニック院長(安城市)


 今回、平成24年6月〜8月における自院で診療情報提供料を算定した患者を対象に診診・病診連携の調査を実施した。
 来院患者数は一月約1200人で、うち糖尿病患者は約800人であった。糖尿病患者については、微小血管障害や大血管障害、糖尿病足病変、そして第六の合併症といわれる歯周病などの合併症で連携している。
 糖尿病症例の連携総件数は72件。糖尿病症例以外は48件と意外と多かった。糖尿病教育入院で病院へ依頼したのが11件、眼科27件、内科13件、外科系16件であった。眼科は患者の運転への影響があるので、なるべく患者の家の近くの診療所と連携している。検査依頼での連携は糖尿病症例が11件と、糖尿病症例以外の35件を下回った。
 介護保険では、糖尿病症例の連携総件数は67件。糖尿病症例以外は44件であった。内容はケアマネへの連絡、訪問リハの依頼、訪問看護指示書などのためであった。
 当院での連携数が多い理由として、地域基幹病院が連携に熱心なこと、地域の診療所の医師に顔見知りが多い、在宅診療を行っていることが挙げられる。
 歯周病は糖尿病の合併症として現在非常に意識されていて、2009年の日本糖尿病学会と日本歯周病学会とのジョイントシンポジウムでも、共同声明で糖尿病患者の診断に歯周病のチェックをルーチンにしようということが謳われている。また日本糖尿病対策推進会議のポスターにも大きく取り上げられている。歯周病が注目されている理由として、歯周病の治療によりインスリン抵抗性が改善し、血糖コントロールが改善することが挙げられる。結果、合併症の発症を防止、進展を抑制できるのではないかと期待されている。
 しかし、自院での歯科の連携は5件だったが、全て歯科からの照会への回答であった。これは、自院の歯科的合併症に関する関心が薄かったこともある。歯科からの照会も抜歯処置に関する照会で糖尿病を疑う照会はなかった。今後は歯周病から糖尿病患者を見つける、糖尿病治療の動機づけとすることによって、医科歯科連携が進むのではないか。

糖尿病網膜症と視力障害
安藤文隆氏・アイケア名古屋院長(中村区)


 私が名大にいたころ、大学病院には糖尿病網膜症の患者が多数いたが日本に硝子体手術が入ってきた時期で、なかなか国内ではできなかった。ドイツ留学で硝子体手術を覚えて帰国していた私は糖尿病網膜症で失明寸前の患者の手術を数多く行った。最近は機械も変わりつつある。
 中途失明になる原因疾患は、6〜7年前までは糖尿病網膜症が最も多かった。最近は高齢化社会の影響もあり緑内障が最も多くなった。それ以外に網膜色素変性、加齢黄斑変性がある。
 黄斑浮腫の治療は、ケナコルト球後注、硝子体内注、アバスチン硝子体内注、硝子体切除術などがあるが、糖尿病黄斑浮腫の場合は効果がない場合もある。
 虚血性視神経症は、従来ステロイド療法であったが糖尿病患者には使用できないので、今後は抗血小板療法が期待される。
 糖尿病網膜症では網膜に著変がなくても、視神経異常もあり得るので、慎重に経過観察する必要がある。眼科でも独自の糖尿病眼手帳などがあるので、それらを活用することにより早期の治療・管理が望まれる。

歯周病治療に伴う糖尿病主治医との連携の提案
橋詰義幸氏・みなと歯科診療所副所長(港区)


 糖尿病と歯周病は密接にリンクしており、歯周病が重症であれば血糖コントロールが不良となり、糖尿病を助長する食生活に陥りやすいと言われている。
 糖尿病患者の歯周治療時の注意点としては、患者が糖尿病と歯周病の関連について理解し、プラークコントロールの重要性を認識できるように指導すること。
 また治療は、歯肉の急性炎症を早期に取り除き、予後不良歯牙は全身状態を確認の上で、早期に抜歯する。再発抑制のためSPT(歯周病安定期治療)のプログラムを厳格に設定する事などがある。
 医科歯科連携の動きでは愛知県地域保健医療計画の糖尿病対策でも歯周病の合併症を予防する必要性からも連携が必要だとされている。また日本糖尿病協会から糖尿病連携手帳が、千葉県保険医協会から歯周病医科歯科連携カードが作成されている。これら連携カード使用のメリットとして、医師・歯科医師ともに糖尿病と歯周病など合併症の病態・処方を確認できる。ぜひこれらのカードを治療時に医師・歯科医師ともに使用することをお願いしたい。

▲ このページの先頭にもどる