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【11.07.25】再生可能エネルギーの展望と課題

原発に頼らないエネルギー政策を

 福島原発事故はいまだに収束の目処が立たず、汚染された環境は簡単には元に戻せないことや被曝への不安、原発から発生する放射性廃棄物の処理技術が確立しておらず、そのつけを後世にまで残さざるを得ないことも、広く国民の理解するところとなった。
 こうした中で、世界的には再生可能エネルギー(自然エネルギー)への転換の流れが加速しており、我が国においても再生可能エネルギーを求める世論が高まっている。
 菅首相は「原発に依存しない社会を目指すべき」(13日)と表明、日本のエネルギー政策を見直す機運も生まれている。
以下、我が国における再生可能エネルギーの展望と課題についてレポートする。(文責・編集部)


遅れている再生可能エネルギーの普及
 再生可能エネルギーとは、「自然現象に由来し、持続的に利用可能なエネルギー」のことで具体的には、太陽光、風力、水力(中小規模)、地熱、バイオマス(生物由来の再生可能な資源。家畜の糞尿や木くずなど)などから作り出したエネルギーを指す。
 我が国の再生可能エネルギーの普及は遅れており、普及率は全発電量の約1〜2%(大規模水力発電約7%を除く)に過ぎない。
 普及を遅らせてきた理由として、我が国では、発電・送電・配電のすべてを電力会社が独占し(海外では発送配電の自由化が進んでいる)、電力の買い取りに抵抗してきたことが挙げられる。加えて、原子力対策には5年間で2兆円以上の税金を投入しながら、自然エネルギーには6500億円にも達しないという国の原発重視のエネルギー政策によるところが大きい。
 我が国のエネルギー自給率は、1960年には56・6%であったものが、2008年には4%まで低下している。食糧自給率40%が問題にされてきたが、エネルギー自給率も深刻な状況にある。化石燃料の輸入額は08年には23兆円に達した。GDPの約5%という莫大な資金が海外へ流出している。

エネルギーの地産地消で地域経済を活性化
 我が国は、豊かな自然エネルギー資源に恵まれており、太陽光発電や地熱発電など世界トップクラスの技術を持っている。政策次第では、再生可能エネルギーが加速度的に普及する可能性がある。
 再生可能エネルギーの特徴は、それぞれの地域の特性を生かして、小規模な発電施設をつくることができる点にある。再生可能エネルギーはエネルギーの自給率を高めると同時に、中小企業の仕事をつくり、雇用を生み出し、地域経済を活性化させる。過疎化と衰退の道をたどってきた農山村は、小水力やバイオマスなどのエネルギー資源供給地として再生が期待できる。
 自然エネルギーによる地域興しの取り組みは、すでに、岩手県葛巻町、高知県檮原町、長野県飯田市など多くの自治体で始まっている。中国電力・上関原発(山口県)の設置に30年近く反対運動をしてきた祝島では、中国電力に頼らずエネルギーを100%自給するプロジェクトが進められている。

再生可能エネルギー買取特別措置法
 菅首相は「電気事業者による再生可能エネルギーの調達に関する特別措置法案」の成立を退陣の条件のひとつに挙げている。
その内容は、(1)再生可能エネルギーから作った電気を、国が決めた単価で、電力会社が買い取ることを義務化する(全量固定買取)、(2)再生可能エネルギー源は、太陽光・風力・水力(中小規模)・地熱・バイオマスとする、(3)買取の費用は、電気の使用量に応じて全国民(個人・事業者)が負担する、(4)買取価格や期間は経済産業大臣が決める。少なくとも3年ごとに制度を見直し、2020年までに廃止も含めて見直す――というものである。現行の買取制度は、住宅向け太陽光発電の余剰電力に限られており、その費用は、今年4月から「太陽光発電付加金」として電気料金に上乗せされている(標準的な世帯で、月30円〜100円程度)。

今後の課題
 政府が進めようとしている再生可能エネルギーの全量買取制度に対しては、電力利用者の負担増にならない対策が求められる。
 アメリカでは、買電の費用は電力会社が支払わなければならない。それは「アボイデッド・コスト(避けられたコスト)」という考え方に基づいている。これは、小規模発電所があるおかげで、電力会社が火力・原子力などの発電所を新設しなくてすんだ(避けることができた)コストという意味である。
 再生可能エネルギーの発電施設・設備や技術開発に対する補助金も必要だ。その財源として、現在電力会社が払っている電源開発促進税(年間約3500億円)の見直しが求められる。これは原発の立地対策費や開発研究費などに当てられているが、元は国民が払った電気料金である。
 将来的には発送配電の分離(電力の自由化)も課題となる。戦後、国策として進められてきた我が国のエネルギー政策は、福島原発事故により綻びを露呈した。エネルギーを国民の手に取り戻し、内需を拡大させる展望が見えてきたが、原発政策を推し進めてきた政官財の固いブロックを打ち破るには大きな世論の形成が必要となる。

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