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【11.03.15】他科の疾患を持った患者さんの歯科治療(6)

他科の疾患を持った患者さんの歯科治療(6)

口腔領域と精神疾患
歯科学術委員 荒尾 和子

協会歯科学術委員会は、2月6日(日)にシリーズ研究会「他科の疾患を持った患者さんの歯科治療研究会」を開催した。第6回は常滑市・西知多こころのクリニック院長の竹内秀隆氏を講師に「口腔領域と精神疾患」のテーマで行われた。講演の概要を歯科学術委員の荒尾和子氏がまとめたので報告する。

難しい歯科治療には私見であるが、治療が難しい(全身状態を含めた難症例)、対応が難しい、知り合いの治療(気を使う・甘えが出る)の3種類がある。今回、口腔領域と精神疾患の講演においては、境界型人格障害の患者さんへの対応も含まれ大変参考になった。

代表的な精神疾患
1.統合失調症
まれな病気ではなく100人に1人の割合で発症するといわれている(1%)。
16〜40歳位までの若い世代に起きやすく男女差はない。

2.うつ病・人格障害
(1)うつ病
うつ病の有病率は6%で再発が多い。ある素因や几帳面・完璧主義など病前性格を持つ人に、発症状況因が重なりうつ病を生じるといわれている。誰でもなる可能性がある。20代から60代まで幅広い年齢に起こる。女性に多い。
うつ病は身体症状として、睡眠障害・食欲減退・月経障害・EDなど本能的部分のダメージ、精神症状として無力感・易疲労感・気分の抑うつ・思考の異常など多岐にわたっている。また、仮面うつ病と、常に空虚感をもつ境界型人格障害も、うつ病に含める。
(2)人格障害
人格障害には様々な種類がある。そのうち境界型人格障害(パーソナリティ障害)は人口の2〜3%と多い。その特徴は、自己中心的・恋愛至上主義など。原因はDNAレベルでの遺伝、幼少時の愛情不足又は過保護、いじめを受けたなど。
平均的な人格からはずれており、なるべく関わらないことが大切。言葉の一言にいきどおり、相手の評価が突然正反対になる場合がある。

3.不安障害
(1)パニック障害
・生涯有病率は1〜2%男女比1対2。原因なく突然起きる激しい不安・息苦しさを感じるパニック発作を起こし、パニック発作を経験すると、また起こすのではないかと不安になる。
・広場恐怖
広場が怖いのではなく、発作が怖く1人で外出できない。すぐに逃げ出せない場所を非常に不快に感じる。
(2)社交不安障害…あがり症・赤面症
(3)強迫性障害…何回も手を洗う・確認行為を繰り返す。薬物療法が効かない。デンタルチェアに座れないことがある。

向精神薬の種類
1.抗精神病薬…主に統合失調症や躁病

2.抗うつ薬…SSRI(フルボキサミン・パロキサチン)SNRI(ミルナシプラン)の方が三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬より口渇が少ない。

3.抗不安薬(安定剤)…主に神経症

4.睡眠薬…ほとんどの精神疾患

5.気分安定剤…主にうつ病・躁病など

6.抗パーキンソン病薬…抗精神病薬の錐体外路症状の軽減

7.抗認知病薬…アルツハイマー病の進行を遅らせる

8.抗てんかん薬…主にてんかん

抗精神病薬の副作用
全ての抗精神病薬はイレウス・便秘・口渇を起こしやすい。また錐体外路症状という副作用がある。歯科にかかわるものとして、アカシジア(静座不能)、ジストニア(口・舌・顔面がつっぱる)、遅発性ジスキネジア(口をもぐもぐさせる・舌が出る)があり、ジスキネジアは義歯の安定を妨げるので発生させないことが大切である。

Q&A
Q:鎮痛薬の禁忌はあるか? ロキソニンは使用できるか?
A:禁忌ではない。使用可。
Q:局所麻酔使用時の注意は?
A:しっかり効かせること。

まとめ
1.精神科領域で投薬する向精神薬・抗うつ薬などは、副作用として口渇が強いため口腔衛生状態を極めて悪化させる要因であり、十分な注意が必要である。

2.精神的に不安定な状態である患者は、心気的な訴えや慢性疼痛などと結び付く可能性があり、外科的な侵襲や不可逆的な治療は、当分の間避けることが必要である。どうしても必要な場合は、家族にも説明・同意が必要である。

3.精神疾患の多くは、不安症状があるため、歯科領域でさらに不安が増強することもあるので注意深い観察が必要である。

4.高齢化社会など今後さらに、精神科領域と歯科治療との連携が必要であるがさらなる連携には、精神科医が歯科領域への知識を広げることが不可欠である。

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