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【10.07.25】他科の疾患を持った患者さんの歯科治療(4)

他科の疾患を持った患者さんの歯科治療(4)

最近の婦人科の話題
歯科学術委員 田辺 芳孝

協会歯科学術委員会は、6月30日(水)に、シリーズ研究会「他科の疾患を持った患者さんの歯科治療」を開催した。第4回は名東区の安井みえレディスクリニック院長の安井美繪氏を講師に「最近の婦人科の話題」のテーマで行われた。講演の概要を歯科学術委員の田辺芳孝氏がまとめたので報告する。

安井先生は、婦人科の腫瘍がご専門でしたが、今は外来で婦人科を主にやっています。最近の婦人科の話題を私たち歯科医師にも解りやすくご講演頂き大変勉強になりました。歯科の研究会ではあまり聞くことのない婦人科の話題で質問時間も大幅に延長致しました。
そこで、研究会の概要につき報告致します。

1、女性生殖器のつくり
子宮は鶏卵大(厚さ3・5〜4cm)の大きさで、卵管を通じて腹腔内に入り感染ルートとなる。また、外性器の肛門―膣口―外尿道口は平面(二次元)に位置し、肛門周囲の菌が膣口や尿道口に行きやすく膣炎、膀胱炎を起こす。

2、思春期の生理
卵巣の卵胞数は、出生時の73万3千から年齢と共に減少し39〜45歳で1万9百となる。つまり、動物としての卵巣機能のピークは25歳と考えられる。
月経痛は、プロスタグランジン(PG)が原因で痛みを起こしているのでPGに拮抗する作用機序の鎮痛剤を選択する。
月経不順は、体重減少が誘因となっても起こる。治療は、体重の回復が基本であるが思春期の患者には難しい。

3、人工妊娠中絶
人工妊娠中絶数は減少している。十代でも減ってはいるが、18、19歳、20代の中絶が多く、高校生、大学生への避妊教育の徹底が必要である。

4、経口避妊薬(oral contraceptives,OC,pill)
低用量ピルは、他の避妊法と比べて避妊有効性が高く、安全性が高い。ホームドクター制度やピルが無料であるという医療制度の中で、ドイツやオランダでは低用量ピルの普及率は50〜60%程度に達する。しかし、日本の普及率は1・3%〜3%にしか達していない(報告によりばらつきあり)。
緊急避妊法としては、緊急避妊ピル(卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤)の服用が最も一般的である。

5、性感染症(STIorSTD)
〔HIV〕
日本では、現在でも新規感染者もAIDS発症者数も増え続けている。クラミジアなど感染しているとウイルスの侵入が容易になる。
〔淋病〕
現在では、経口ペニシリン製剤は、ほとんど効かない。ある種の注射薬(ロセフィン、ケニセフ、トロピシン)のみ有効である。またオーラルセックスの増加により淋菌の咽頭感染が増えているが薬剤が効きにくい。
〔クラミジア感染症〕
性器クラミジアは、STDの中で感染総数がもっとも多い。女性性器にクラミジアが検出される場合、10〜20%咽頭にも検出される。

6、骨粗鬆症
女性は卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されなくなり、閉経を迎えると急速な骨量の減少をきたす。それは、エストロゲンが甲状腺カルシトニン分泌促進や成長ホルモン、ビタミンDの活性化に作用して骨からのカルシウムの流出を防ぎ、さらに骨を強くする働きがあるから。
〔ホルモン補充療法(HRT)〕
エストロゲン欠乏に伴う諸症状や疾患の予防、治療を目的にした療法。
2002年に米国での副作用報告で大きく後退しているが、日本では2009年にホルモン補充療法ガイドラインをまとめた。更年期症状の治療、骨粗鬆症や委縮性膣炎の予防を目的としている。
〔SERM〕
臓器、組織によってはエストロゲン作用を発揮したりしなかったりする薬剤。
エストロゲンと同様な作用を骨にするが、乳がんや子宮体がんには影響しない。
〔RAL(raloxifen)・エビスタ(米国の商標)〕
乳がんや子宮体がんの発症の危険をもたらさず、エストロゲンの骨や心臓の保護という長期的恩恵をもたらす。閉経後女性の骨粗鬆症の予防および治療薬。

7、子宮頚がん
ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により発病する。検診によりウイルス感染や前癌病変の有無がわかる。また、HPVワクチンが実用化され、これで、子宮頚がんの約60〜70%の予防ができる。

8、妊産婦
〔放射線〕
妊娠4週から15週頃までの、胎児が催奇形因子に弱い時期に、問題を起こす可能性のある最低線量は50〜100msv(ミリシーベルト)とされる。胸部(PA)X線撮影の胚への線量は2μsvで、骨盤を目的としたCT検査を繰り返し行った場合を除き、胎児に危険な線量にはまず達しない(田辺補足:歯科X線の実効線量:歯科パノラマ撮影は、約0.04msv、歯科デンタル撮影は、約0.015msv)。
〔麻酔〕
歯科の局所麻酔は、まず問題ない。
〔薬剤〕
予定月経日プラス5日の期間中に服用した薬剤については、「all or noneの法則」で薬剤の影響があれば流産となる。育った場合は「何の影響も受けなかった」と考え心配ない。
妊娠中の抗生物質は、古くからある薬剤が安全と考えている(例:セフェム系、ペニシリン系)。鎮痛剤の投与は経皮的投与も含め投与しない方がよい。

9、講演後の質問から
(1)流産が増加しているのは高齢出産の増加と関係しているのか。
―高齢だけでなく不妊治療も関係していると考えられる。
(2)月経と口内炎は関連するのか。
―月経時に口内炎ができやすいというのであれば「月経随伴症候群」のひとつの症状となるが、科学的と言えるのかどうか。
(3)授乳している母親への麻酔、薬剤投与について。
―局所麻酔は、問題ない。薬剤は母乳から乳児に移行するので「授乳中禁忌」とされている薬剤は投与しない事。

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