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【10.04.05】身近な法律知識 No.25

共有部分でケガをした場合の責任は?

Q.テナント開業しています。医院のある同じ階の廊下が濡れていて、通院してきた患者さんが滑って転び、骨折してしまいました。廊下は医院だけが接している場所ではなく、他のテナントとも共用している場所です。このような場合でも医院は責任を負わなければならないのでしょうか?
A.テナントビルの共用部分の管理責任は、基本的にはビルの所有者にあるといえます。特に廊下は、多少の水濡れがあっても滑らないような構造が必要と考えられ、滑りやすい廊下を放置していたということであれば、建物の所有者に設置・保存上の瑕疵があったとして土地上の工作物の責任(民法717条1項)が発生する可能性が高いと考えられます。判例では、多数の店舗が入居している商業ビル内の食堂外の通路を歩行中の者が、通路に付着していた油等によって転倒・負傷した事故について、ビルの所有者に土地工作物責任として負傷者に対する損害賠償責任を負わせた事例(東京地方裁判所平成13年11月27日判決)が参考になります。
 では、テナント側は一切責任を負わないかというと、必ずしもそうとは言い切れません。医院としては、診療契約に付随する義務として、患者の生命・身体を危険から保護するように配慮すべき義務を負っているといえます。施設における安全配慮義務の及ぶ場所的な範囲は、基本的には医院の占有・管理している範囲だと考えられ、共用の廊下はその範囲外となる場合が多いと思われますが、例えば、医院の行為が原因となって水濡れが生じ、滑りやすくなっていることを認識していたのにそれを放置していたような場合など、事故発生の予見が一般的に可能で事故を防止する措置を講じていないような場合には、医院も安全配慮義務違反としての責任を問われる余地があると考えられます。
 ビル所有者と協力して、事故を未然に防ぐような措置を講じておくことが何より大切でしょう。
(稲垣仁史協会顧問弁護士)

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