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【10.01.05】身近な法律知識〜弁護士さんに聞いてみようNO.22

遺産分割での「特別の寄与」とは

Q、私は親と長年同じ医院で仕事をしてきました。そして親が仕事を辞めた後も同居して老後の面倒を見てきました。その親が亡くなり、他所に勤めている兄弟と相続の問題が発生しています。私が親の面倒を見てきたことや、医院で一緒に仕事をしてきたことは遺産分割で考慮して貰えるのでしょうか?

A、 亡くなられた方が遺言を残していれば遺産の分け方は遺言に従うことになりますが、ここでは遺言がないという前提で回答します。
 遺産の維持・増加に特別の貢献をした共同相続人と何の貢献もしていない共同相続人とが、単に法定相続分で形式的に平等な遺産分割をしたのでは却って不公平な結果となるような場合に、共同相続人間の実質的な公平を図るための制度として「寄与分」が定められています(民法九〇四条の二)。共同相続人の中に「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした」者がいる場合、相続財産の中の一定の割合または一定の価格を寄与分として特別の寄与をした相続人の取り分に上乗せして分割するものです。一般に寄与分の成立要件として(1)寄与行為の存在、(2)寄与行為が「特別の寄与」と評価できること、(3)被相続人の財産の維持または増加があること、(4)寄与行為と財産の維持・増加との間に因果関係があること――が必要であるとされています。
 ご質問の事案ではまず、単に「親と長年同じ医院で仕事をしてきた」ということのみでは寄与分の成立には足りないでしょうが、例えば親の事業に対して多額の出資をしたり長年無報酬ないし低額の報酬で労務を提供してきたことにより親の財産が相当増加したということであれば、寄与分が認められやすいでしょう。「老後の面倒を見てきた」という点は、その程度が子の親に対する扶養義務・扶助義務の範囲内のものであれば「特別の寄与」とは評価されず寄与分が認められないことが一般ですが、扶養・扶助の範囲を超え他の共同相続人に比べて特に親の介護に努めたり介護のための特別の出費をしているような場合には「特別の寄与」として寄与分が認められ得ます。
 寄与分の成否や額の算定は、まず共同相続人間の協議で定めることとされていますが、これが調わないときは、家庭裁判所が「寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して」定めるものとされています。寄与分の認定は裁判所の裁量的行為とされており画一的には判断できませんが、ご質問の場合も上記のような「特別の寄与」と評価しうるような事情とそれによる相続財産の維持・増加があり、それが裏付けられれば、寄与分として考慮されうることになります。
                            (稲垣仁史協会顧問弁護士)

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