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【09.11.05】身近な法律知識〜弁護士さんに聞いてみよう NO.20

元従業員からの中傷、なんとか止めさせたい

Q. 私の医院で働いていた従業員が退職しました。しばらくして、元の従業員が近所で私の悪口を言いふらしていると、近隣の住人から聞きました。丁度その頃から無言電話が頻繁にかかるようになり、医院の壁に落書きされたこともあります。
 私の名誉や信用が傷付けられるし、嫌な思いをしなければならず、とても不安です。このような行いを差止めたり、名誉毀損で訴えたりすることはできるのでしょうか。
A. こういうトラブルは少なくはありませんが、なかなか難しい問題です。
 一般的には、他人の行為によって、人の名誉や信用が傷つけられたり、そのおそれがある場合には、その行為をしないように求める差止め請求をすることができます。また、現実に名誉や信用が毀損されたときには、慰謝料の支払を求めることができます。業務を行うのに支障が生ずるような妨害行為に対しても差止めの請求は可能ですし、具体的に業務妨害の結果仕事ができなくなったとか支障が生じた場合には、これにより生じた損害の賠償を請求することは可能です。
 お尋ねの行為がどの様なものであったのかが不明ですが、まず、話したこと、喋ったことの内容が、かなりの程度明確になっていることが必要です。元の従業員があなたに向かって話したとか、誰かに話しているのをあなたが見聞したのなら、そのあらすじをなるべく正確に記録しておくべきでしょう。録音、録画はとても有益です。
 あなたのいないところで話された内容であれば、そのなかみと正確性をどう確保するかはとても大切です。喋ったことのあらすじはもとより、どのような場で、どういう機会に話されたのか、名誉・信用を傷つける言動とは何であったのかを明らかにしておかなければなりません。見聞した人の協力は欠かせないと言えます。
 次に、この言動があなたの名誉や信用を毀損するものであるならば、差止や損害の請求をとることを考慮してよいでしょう。名誉・信用は、「人の性質、行状、信用等について世間から相当に受けるべき評価を標準とする」と言われているので、あなたの「世間から受けるべき評価」が客観的に毀損されたと判断しうるかどうかがポイントになります。つまり、社会的評価が毀損されたと認められる程度になっていれば、一応名誉・信用の損傷行為がされたとして、法的手続を検討してよいでしょう。
 また、ある人の行為が「公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合、摘示された事実が真実であることが証明されたとき」は名誉・信用を毀損する不法行為とならず、差止め、損害賠償が認められないことがありますので、注意しましょう。摘示された事実が真実であることの証明がされなくても、事実の重要な部分について「行為者がそれを真実と信ずるについて相当の理由があるとき」も同様です。医院での診療行為の不適切さや法令を遵守していない事実などは医療の高度の公益的性格からして公共の利害に係る事実となりうるでしょう。「公共の利害に係る事実」であった場合には、次に行為者の意図が「専ら公益を図る目的」に出たものか否かを検討しなければなりません。この意図は、なされた言動の内容、その時期や方法、行為者の性格、職業、社会的地位、これまでの行動をはじめ、諸々の事情を総合的に考慮することになります。行為者の指摘した事実が真実でないか、真実であると信ずるについて相当の理由のない場合は、いうまでもなく、名誉・信用を毀損する行為となりえます。
 嫌がらせ電話、その他の問題については次回にします。(原山剛三協会顧問弁護士)

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