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【09.06.05】身近な法律知識−弁護士さんに聞いてみよう NO.15

賃料値上げ、応じなければならないか?

Q.テナント開業しています。最近、大家から「周辺の賃料と比較して安くなっているから」として賃料の値上げを請求されました。確かに周辺の賃料と比べて安いようですが、値上げの額は従来賃料の2割増しという大幅なものです。大家の請求のとおり値上げに応じなければいけないのでしょうか?

A.請求のとおり応じる必要はありませんが、実際に近隣相場と比べ不相当に安くなっているのであれば相当額について法的にも値上げが認められる可能性があります。
 建物賃貸借の賃料は、社会情勢や環境の変化により当初定めた額が不相当となる場合があります。そのため法は、不相当な賃料額を是正できるよう将来に向かって賃料の増減額を請求できる権利を定めています(借地借家法32条)。同条1項は、賃料の増減額を請求できる場合として、(1)土地又は建物に対する租税その他の負担の増減、(2)土地又は建物の価格の上昇又は低下、(3)その他の経済事情の変動、(4)近傍同種の建物の借賃との比較――によって従前の借賃が不相当となった場合を挙げています。これらは例示であって、実際にはこれらの諸事情のほか賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情その他諸般の事情を総合的に考慮して増減額請求の当否および相当な賃料額が定められることになります。
 このような諸事情がある場合に相当な賃料額への増額・減額請求ができることになっているのですが、実際にはそのような諸事情があるのか否か、あるとして相当賃料額がいくらなのかは、そう簡単に決まるものではありません。賃料の増減額について当事者の協議がととのわないときには裁判所で増減額の当否および相当額を決することになります。その場合、この種の紛争はできるだけ当事者の話合いで解決した方が望ましいことから、いきなり訴訟手続ではなく、まずは調停手続を経るべきことになっています。調停や訴訟では、賃料の増減額を正当づける前記諸事情の裏づけ資料や不動産鑑定士による相当賃料鑑定等に基づき相当賃料額が追究され、話合いでの決着がつかなければ最終的には裁判所によって増減額の当否や相当額が定められます。
 当事者間で協議が調わないとき、増額請求を受けた側は、当面とりあえず自ら相当だと認める額を支払えばそれで足ります(賃料不払いとならない)。但し、支払った額が後に裁判によって定められる相当額に不足するときは、請求されたときに遡って不足額に年1割の利息を付して支払わなければなりません。他方、減額請求の場合、賃貸人は当面自ら相当と認める額の請求をすることができ、賃借人としてはその請求された額を支払わなければなりませんが、後に裁判によって定められる相当額を超えて支払った場合は、減額請求時に遡って超過額に年1割の利息を付して返還請求することができます。
建物賃貸借の賃料額の改定(増額のみならず減額も含む)については、以上のような法の仕組みを理解したうえで、不動産業者等から近隣相場やその変動等の情報を集め、相当賃料額について堂々と協議して大家さんとの間で合意を図ることが望ましいと思います。
(協会顧問弁護士稲垣仁史)

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