協会の主張・決議・要望

【17.11.25】遠隔診療

拙速な議論は慎むべき

 4月14日の未来投資会議で、安倍首相がICTを活用して患者を診る遠隔診療の推進を明言した。離島やへき地など通院困難な環境にある人への遠隔診療を全て否定するものではないが、政府が進めようとしているのは、経済成長戦略の一環として位置づけ、これによって医療費を削減するとともに、公的医療保険制度を利用した新たなビジネス展開を狙うものである。
 厚労省は遠隔診療に関する解釈を周知するため7月14日に事務連絡を出したが、この中で(1)離島やへき地に限定しない、(2)対象疾患についても在宅酸素療法患者や在宅難病疾患に限定しない、(3)対面原則も対面診療と適切に組み合わせて行えば初診を遠隔診療とすることも可能、(4)保険者が行う禁煙外来は一定の要件を満たせば遠隔のみでも医師法20条(医師は自ら診察しないで治療をしてはならない)には抵触しない――とした。
 そもそも医療とは患者と医師歯科医師との信頼関係に基づく共同の営みであり、信頼関係を醸成する上で直接に対面する対面診療が原則で、遠隔診療はこれに遠く及ばない。初診において「幅広く観察し、深く情報を取得する」という点で、限定的にならざるを得ず、この点からも遠隔診療における医療の質、安全性、信頼性のエビデンスが不明確である。また、患者との診療契約は準委任契約として私法上の権利・義務が生ずる。遠隔診療での法的整備がなされていないので、医師歯科医師の義務や責任が不当に拡大されないか懸念される。
 ベンチャー企業を中心に遠隔医療関係のサービスを提供する動きが活発化しており、すでに数社の展開が知られている。現在、遠隔診療で算定できるのは、電算等再診料、処方(せん)料、ペースメーカー指導管理料加算など一部に限定されている。2018年度改定で、糖尿病など生活習慣病疾患への評価拡大が予想されており注視が必要だ。
 2月1日、中医協総会で、厚労省は福岡市や市医師会が取り組んでいるICT活用の実証実験において効果があったと報告し、支払側も「条件を付けた上で診療報酬による評価をすべき」と主張した。これに対して日医側は対面診療の重要性を強調し、「エビデンスの集積が充分ではなく、時期尚早である」と反論した。
 医療の本質にせまる問題であり、医学的根拠がないまま拙速な議論を急ぐべきでない。

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