協会の主張・決議・要望

【17.11.15】子どもの貧困

医師・歯科医師として実態を理解しよう

 「子どもの貧困」は、子どもが経済的困窮状態に置かれ、発達の諸段階における様々な機会が奪われた結果、人生全体に影響をもたらすほどの深刻な不利を負ってしまうことだ。経済的貧困にとどまらず、人や社会との「つながりの貧困」、自信が持てない「自己肯定の貧困」を抜きに考えることはできない。今、日本では7人に1人の子どもが「相対的貧困」状態に置かれている。「相対的貧困」とは、その人が暮らしている社会の普通の生活水準と比較して下回っている状態のことである。「昔はもっと貧しかった」という意見もあろうが、普通の生活も国や地域また時代によっても水準は異なる。「相対的貧困」は、「食べるものもなく飢えている」という状態の「絶対的貧困」とは違い、見えにくい「貧困」を可視化する概念である。
 今回の医療研究フォーラムのシンポジウム、阿部彩教授の基調講演では、自分の健康状態がよくないと感じている子どもや、医療機関の受診抑制を経験したことがある子どもの割合は困窮層ほど高く、特に医療費助成が切れる高校生では「自己負担が払えず」という理由が多くなっている。自己肯定感では孤独を感じる割合が高く、主観的幸福度が低い傾向にあること。保護者の就労状況は正社員の割合が低く、主観的健康状態が悪く、抑うつ傾向にある割合が高い。また、困ったときに相談する相手がいない割合も高いことが報告された。
 貧困が子どもの健康に影響する経路は一つではない。子どもの健康格差を縮小するためには、まず医療へのアクセスの保障である。高過ぎる国保料を是正し応能負担とすること。困窮層の高校生では食事回数や野菜摂取量が少なく健康状態も悪いので医療費の自己負担を無料にすること。中退しても何の支援もない高校生世代こそ手厚くする必要がある。また、食事・栄養、住居、親の就労等生活面全体の貧困格差の解消が必要だ。
 見えにくい相対的貧困を調査・アンケート等で可視化すること。既に貧困に陥ってしまった子どもに対する生活保護制度や所得制限付きの児童手当などの川の下流にあたる対策だけでなく、川の上流部分で貧困を起こさせない、つまり社会的決定要因へ働きかける必要がある。食事を満足にとっていない、口腔崩壊や受診抑制など、子どもの実態を医師・歯科医師がこうした理解の上で気づくこと、その先の制度への橋渡しが求められている。

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