協会の主張・決議・要望

【15.09.15】TPP

数億人の健康損ね 百害あって一利なし

秘密裏に交渉が続けられていたTPPは、甘利TPP担当相が「大筋合意も可能だ」としていたハワイ閣僚会合は合意に至らないまま7月31日に閉幕した。先進国と新興国、NZなどの農産品輸出国と輸入国など利害が複雑にからみあったことと、「自由化交渉は人々の暮らしの向上よりも、グローバル企業の利益を図って、格差につながる」という各国国民の反対の拡がりが反映して漂流状態に陥ったのである。
協定草案全29章のうち税関・貿易十章あまりが実質的に交渉を終了したと伝えられ、残りの章で特に隔たりが大きいとされるのが知的財産権である。最も対立が激しかったといわれたのが医薬品の新薬データ保護期間をめぐる交渉だ。延長しようとする日米と反対する10カ国の対立である。強大な製薬メーカーを抱える米国は12年間の保護を主張し、日本は8年を主張、新興国・途上国は人々の命に直結するとして5年を主張した。データ保護期間が長期になるとジェネリック医薬品が事実上他国で製造、使用できなくなる可能性とともに、薬価のさらなる高騰も招く大問題である。世界60カ国以上で活動している国境なき医師団もジェネリック医薬品に頼っており、5億人の死活問題と批判している。HIV治療費は1人当たり年間1万ドルであったが、ジェネリックで100ドル以下になったのである。
オーストラリアでは、薬の患者負担が増大し健康悪化に直結すると述べている。また、たばこ広告を規制する権限がISDS(投資家対国家紛争解決条項)によって弱められ、健康被害が増大するとして、47団体が連名でTPP反対を表明している。世界医師会(WMA)も4月理事会で「TPP・TiSA(新サービス貿易)の協定が経済的利益の追求による健康に及ぼす影響を指摘する」決議をしている。
日本に関しても、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算(ジェネリックが発売されるまでの間は薬価が維持される)」について米国は恒久化を要求しており、そうなれば薬価は上がり患者負担が増え、公的医療保険の財政が一層悪化する。
今後の情勢としては、米国大統領選挙の予備選挙が来年2月に始まるので、年内に審議を開始しないと批准手続きが難しくなるという事態に追い込んでいる。国民や国会に対し秘密裏にすすめ、国民を犠牲にして多国籍企業の利益を図るTPP交渉からの撤退を政府に迫る反対の声を各国で強めていく必要がある。

▲ このページの先頭にもどる