協会の主張・決議・要望

【13.05.25】秘密保全法

「口外するな、聞き出すな」とはとんでもない

 安倍首相は先月、外交・軍事など国家秘密流出防止のためとして、秘密保全法の早期国会提出を明言した。昨年の民主党政権下の通常国会で、法制化が日程に上り、弁護士会や新聞協会・民放連など国民各層からの反対の声を前に提出が見送られていたものだ。
 秘密保全法は、政府が「特別秘密」と決めたことを口外すると罪に問われるものだが、何が特別秘密かは軍事分野に限らず「国の安全」「外交」「公共の安全及び秩序の維持」など、およそあらゆる情報が秘密の対象とされる。しかも、それは国民に知らされず、「何が秘密か、それも秘密だ」というわけだ。そして、「秘密」を扱う人は、口外した人はもちろん、取材や情報公開などで聞き出そうとした人も罪になる。罰則も、国家公務員法や自衛隊法のそれを上回る厳罰主義を併せ持つ。
 原発・放射線情報に関わる政府の情報統制や、秘密交渉が特徴のTPP(環太平洋経済連携協定)での取材・報道などは、この法体制ができれば処罰の対象となり得るわけだ。
 さらに、政府の有識者会議報告書は、「政府が必要と判断すれば」重大なプライバシー侵害の調査も明記している。すなわち、個人の政治活動・表現の自由に関わる情報はもとより、信用状態や通院歴などのセンシティブ情報がそれであり、医療機関や金融機関などへの反面調査も想定している。さらに、配偶者など身近な者も調査対象にされる。
 これでは、オープンな情報に基づく自由な議論が否定され、国会や裁判での事実把握・追及も困難になる。戦前の大本営発表による情報支配や国民総動員を想起させる。
 政府が秘密保全法策定を表明したのは、日米間の「秘密軍事情報保護協定」に基づき軍事機密情報保全の必要性をアメリカに求められていることや、外交・防衛などでの機密条項保全を求める「国家安全保障会議(日本版NSC)」法制化とも密接な関連がある。
 日本ペンクラブの意見表明(2011年11月)は、「現代の民主主義社会における政府(国家)は市民の信任と合意なしには存立し得ない。市民は政府の保有する情報を最大限に閲覧・活用し、政府の適否を判断する権利を有する。この初歩的原則を等閑視し、市民社会とは別個に国家の存在があり得ると想定する今回の法制整備の考え方には、民主主義成立の歴史的経緯に対する根本的無理解がある」と断じているが、国民の知る権利を脅かす秘密保全法制化を認めるわけには断じていかない。

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