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【11.12.22】児童・生徒に広がる口腔の健康格差解消についての声明

児童・生徒に広がる口腔の健康格差解消についての声明

経済格差が、住環境、生活習慣、利用可能な医療サービス、人間関係、そしてストレスなどに影響して健康格差を引き起こし、口腔の健康格差を生み出しています。
昨今、口腔の健康が全身の疾患の源とまで言われるようになりました。しかし、口腔の健康を守り増進させる口腔衛生は過小評価されがちな公衆衛生の課題です。
学校保健管理の現場においては、歯科健診の結果、口腔保健指導や歯科治療が不可欠で歯科医療機関への受診を勧められても放置したままの児童・生徒が見受けられます。また、子ども医療費助成制度の改善により受療権が拡大されたにもかかわらず、放置され深刻な重度う蝕に罹患する児童・生徒が少なからずいます。
親の経済的問題が影を落とす深刻な重度う蝕罹患児童・生徒は、親の経済事情、長時間労働、多兄弟、受動喫煙、片親が外国人、ひとり親、親の低学歴、貧しい住宅環境など家庭環境や親の過酷な問題などを抱えています。これらの事情により社会的疎外の可能性が高いあるいは既に社会的に疎外されている家庭が存在するのです。
ニュージーランドの子ども980名を26年間追跡調査によると、子どものときの社会経済状態が悪いと、26歳になった時の口腔内状態も良くなく、また、大人になって社会経済的要因が良くなっても、口腔内状態はそれほど良いとはいえないことが分かっています。
所得再配分の前後で子どもの貧困率を比較すると、OECD主要各国の中で唯一日本だけが所得再配分後の貧困率が高くなっています。つまり、政策により子どもの貧困率は逆に悪化しており、口腔の健康格差が固定化され拡大してしまう危険性があります。
これら口腔の健康格差解消の戦略としては、(1)フッ化物の使用促進のための政策、(2)適切な歯科治療の有効性の確保が必要と考えます。
医学的見地から水道水のフッ素化は最も費用対効果の高い方法と言われます。これには水道法の改正を伴います。全児童・生徒対象にできるので、社会的不平等を減少させることができます。大規模な疫学的研究によると、水道水のフッ素化によるう蝕減少率は50%という結果です。その一方、全給水地域に一様に供給されるため、水道水のフッ素化を好まない人たちにも強制される、水道水の用途は多様であり、飲用等人体に摂取される量は1%のみである、有効・安全濃度を保持し全地域に24時間安定して供給できるか、過剰な地域や時間帯が生じないかなど、現時点では危惧される点もあります。
フッ化物配合歯磨き剤は最も実践的で受け入れやすい方法であり、その効果も確証されています。しかしここで問題となることは、親の経済問題が影を落とす児童・生徒へのフッ化物配合歯磨き剤の普及と家庭での歯みがき習慣などの生活習慣や洗面所等住宅環境です。親は、1日1日を生活するので精いっぱいで、規則的な生活、着替え、入浴、歯みがきといった基本的な文化や生活習慣を親から教えてもらえない子供たちが多数いるということです。
貧困格差が広がる中、政策的に所得の再配分も十分働かない現在、経済的に恵まれない家庭においても頼れるところは義務教育の場である小学校・中学校です。そこで、口腔の健康のセーフティーネットの場として小学校・中学校場合によっては保育所などを位置付けることが必要ではないでしょうか。セーフティーネットの例として、学校保健計画に基づく歯科予防指導と集団フッ化物洗口があります。集団フッ素洗口は、家庭で適切な保健行動をとることができないハイリスク児童・生徒には大きなメリットがあり、適切な保健行動がとれる児童・生徒にも少なからずメリットがあり較差軽減となります。法的には学校保健安全法第5条の規定する学校保健計画の策定にも位置づけられています。しかし、集団フッ化物洗口の場合にも、フッ素洗口を好まない家庭もあります。また、医薬品であるフッ素洗口剤の入手と管理の課題があります。
これらを考慮し、2011年8月10日に公布・施行された「歯科口腔保健の推進に関する法律」を根拠法として「健康増進・疾病予防」に重点を置いた歯科保健・医療政策への転換が必要です。日本国憲法第25条「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の下、親の経済格差が子どもたちの口腔の健康格差とは無縁な日本、そして口腔の健康は全身の健康であるとする文化を育む日本を希求します。
以上
愛知県保険医協会歯科部会

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