あいち医師・歯科医師九条の会

【11.03.05】あいち医師・歯科医師九条の会 憲法のつどい

“改憲派”の動向と私たちの課題
小林武教授が講演

   「あいち医師・歯科医師九条の会」は、2月19日(土)、協会伏見会議室で第11回の憲法のつどいを開催、医師・歯科医師、市民ら44人が参加した。
 小林武氏(愛知大学法科大学院教授)が「どうなる憲法、どうする憲法――“改憲派”の動向と私たちの課題」のテーマで講演。
 小林氏は、憲法をめぐって(1)改憲のイデオロギー的基盤として、外国人地方参政権反対、厳罰歓迎などの国民感情が広がっていること、(2)改憲の舞台づくりとして、憲法改正手続法・憲法審査会の整備が進められていること、(3)今日の改憲問題は、(ア)「日米同盟」、とくに沖縄・普天間基地問題を契機とする九条改憲、(イ)自治体統治構造(二元代表制)の破壊――「地域主権改革」によって議会・首長の「二元代表制」を改変・否定し、首長に権限を集中させる動きを主眼点にして強まっていると述べた。
 そして、河村名古屋市長の「市民税減税」「議会改革」「議会解散の直接請求運動」が、「民主主義」的クーデターとよぶべきものだとして、「権力者による直接民主主義制度の逆用」が河村氏の独裁者的資質と相まって進められた問題点を指摘した。
 河村氏が「民主主義」を口にして進めている手法についても、それは多数者支配民主主義であり、少数者尊重の立憲民主主義とは異なると述べた。

河村名古屋市長の「改革」 何が問題か

 小林氏は、河村名古屋市長の「市民税減税」「議会改革」「議会解散の直接請求運動」は、「『民主主義』的クーデター」と指摘したが、何が問題なのか、今後の教訓は何かなどの部分について、紹介する。

自治体統治構造の破壊――河村名古屋市長の「民主主義」的クーデター
 河村名古屋市長は、市民税「減税」(一律=高所得者優遇減税)、「議会改革」(報酬半減・党議拘束撤廃など)、「議会解散の直接請求運動」を進めてきた。
 「議会改革」では、当初は「議員定数半減」も言っており、途中から言わなくなったが、3月投票の市会議員選挙で自ら率いる政党が過半数を占めれば、定数半減を実行すると思われる。しかし、定数半減は16行政区のうち9が定数1〜2になるというもので、少数党排除、住民代表機能低下という小選挙区制効果をもたらす。議会が民意を反映しない“壊れた鏡”になってしまう。

何が問題なのか
 これらの「改革」の何が問題なのか。
 まず、議会解散直接請求は、権力者による権力者のための議会解散直接請求であり、直接民主主義制度の逆用といえる。権力者をバックにした署名運動ゆえの驕りがみられ、無法・杜撰さが数多く問題になっている。市長による市政の私物化である。
 つぎに、クーデターをもたらしたものは何か。それは、(1)「減税」「報酬半減」という、一見誰も反対できないような主張をかざす「ポピュリズム」や争点の単純化が行われ、「保身議会・税を食う職員」などと「敵」を設定する手法など、独裁者的資質があること、(2)永年の(共産党を除く)オール与党体制のもとで市議会への市民の不信頼が募ったこと、(3)「庶民革命」の外見に人々が拍手喝采するなかで強権政治への流れが強められたこと、(4)劇場型報道を特徴にしたマスコミの圧倒的な偏向報道、(5)市長側運動団体の戦闘力――などがあげられる。

教訓と今後の課題
 それでは、私たちは何を学ぶべきなのか。第一に、住民投票には意義もあるが陥穽(=落とし穴)もあるということである。住民投票は、住民主権実現の不可欠の手段であるが、同時に、独裁者の誕生と権力の正当化のために悪用される(「プレビシット」)面がある。フランス革命のナポレオンが三回の国民投票で自らの権力基盤を確立していったことはその一例である。
 第二に、住民投票への対応として、同時に行われた市長選挙が市民の関心事となり、住民投票は課題からスキップされた感があるが、選挙と住民投票とは「二重の構え」が本来課題であったと思う。
 第三に、河村市長は、「民主主義」を口にして「改革」を進めているが、それは多数者支配民主主義であり、弱者の側に立つべき少数者尊重の立憲民主主義という、「民主主義」の理解が大きな問題である。

二元代表制における議会の位置の再確認
――憲法でどうする

 日本国憲法は、二元代表制を規定し、議会・首長ともに公選の民主主義的基盤をもっている。対等者間の抑制と均衡の関係が講じられているわけだ。
 一方で、議会については「議事機関」として明記されてもいる(九三条)。合議制ゆえ民意反映に適すると考えられるからだ。このことによって、「議会」は第一義的住民代表機関として独任制の「首長」に優位しているといえる。
 このような観点から見れば、実態に合わせて二元代表制を変えてゆくのか、実態を是正して議会本来の機能を再生させてゆくのかが、今問われている。

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